2022年1月18日、合意形成プラットフォーム『The Tokyo Post』のローンチを記念し、菅野志桜里編集長は運営会社であるINCLUSIVE株式会社代表藤田誠とINCLUSIVE株式会社スタジオにて公開対談と記者会見を行った。
菅野志桜里編集長×藤田誠社長ローンチ記念対談
〈登壇者〉
◆菅野志桜里 元検事・元衆議院議員・社団法人国際人道プラットフォーム代表、『The Tokyo Post』編集長
◆藤田誠 INCLUSIVE株式会社代表取締役社長(『The Tokyo Post』運営会社)
藤田誠(以下、藤田):こんにちは。INCLUSIVEの藤田でございます。今回のこの場の目的としましては、このたび私が代表を務めますINCLUSIVEと菅野志桜里さんとの取り組み連携、その一環としての「The Tokyo Post」というプラットフォームを、本日ローンチすることを皆さんにお伝えします。
では、さて本題に入る前に、自己紹介させていただきます。2007年に創業したINCLUSIVEは、メディアDXエージェンシーとして、これまで出版社やテレビ局を中心に、60メディア以上の新規事業の開発と運営を取り組んでまいりました。現在、30媒体以上の運営、及び地方テレビ局さんを中心に70メディアほどの収益化などに取り組んでおります。
また、直近では、堀江貴文さんや三浦瑠麗さん、茂木健一郎先生など、著名な個人の皆さんの発信力を強化するような有料課金のプラットフォーム事業なども取り組んでいます。では続きまして、志桜里さんお願いします。
菅野志桜里(菅野):改めて、「元」山尾志桜里、今は菅野志桜里です。ご存じの方もいらっしゃるとおり、検察官という仕事の後、約10年、衆議院議員をやっていました。去年の10月に卒業しまして、今は弁護士、そして国際人道プラットフォームという一般社団法人の代表理事を務めて、これまで取り組んできた課題を民間の立場からどう発展させていくことができるかと今考えて、新しいことをスタートしています。
菅野志桜里の議員卒業を聞き編集長をオファー
藤田:ありがとうございます。今回のきっかけとしましては、私から、まさに当時、山尾志桜里先生にご連絡申し上げて、今後のご活動についてご提案をさせていただけないかというところから入りました。
菅野:ちょうど、私がもう次の選挙は出ませんと、議員卒業の告知をしたタイミングだったと思います。私もそのとき、秘書さんやスタッフとか、様々な人を介してコミュニケーションをしてきた議員だったわけですが、もう議員卒業で、一人の人間としてちゃんと自立をして、直にいろんな人とやりとりをしていきたいなってちょうど思っているときでした。なので、いわゆる公のFacebookのメッセンジャーって、全てを自分で確認することはそれまでしていなかったんですけれども、やっぱり自分でやりとりを直接やってみようと思ったときに、藤田さんから突然のメッセージを頂きました。会ったこともなかったんですけれども、そのメッセージに何かちょっとぴんときてしまうところがあって、ぜひお目にかかりたいというようなお話をしたら、藤田さんが当時の会館事務所に来てくださったんですよね。
藤田:私としては一市民として、野党の有力議員である志桜里さんのいろんな発言は以前から興味を持っていました。引退報道を見聞きしたこと、それから一番行動に移すきっかけになったのは、酒類販売事業者に対する休業や時短要請ということに対する取り組みを、いけないんじゃないですかということを非常にロジカルかつ切れ味良く進められて、国と都の方針を大きく変えられたということがございましたよね。あれは非常に、一国民ですとか飲食店の友人がいる私としても、何かスカッとしたというか、素晴らしいなと思ったんですよ。そんな素晴らしい人が辞めちゃうとは思わなかったので、非常にもったいないと思いましたし、そのアジェンダ設定力、あるいはその行動力というのは、我々はメディアを本業としておりますけれども、何かできるんじゃないか。そんなところでご連絡をさせていただいたということでしたね。
菅野:そのときに藤田さんが、一つはいわゆる政権の課題を指摘し、追及するということだけではなくて、それを超えて何か新しいキャリアとか、新しいロールモデルみたいなものをつくっていくことができたらと言ってくださったのを覚えています。あともう一つは、「この間、どうすれば志桜里さんを、社会にとって一番ハッピーな形で役立たせることができるのかということをずっと考えてきました」とおっしゃってくださったのが印象的でした。私自身、政治家を卒業しても社会貢献は卒業したくないと思っている中で、卒業後の自分の姿をいろいろと思い描いたときに、同じ方向性を持てる人やグループと、連携の力で物事を変えていきたいな、広げていきたいなという思いがあって、初対面で結構いろいろと話をさせていただいて、ぜひ連携してやっていこうと、割ととんとん拍子だったのを覚えています。
藤田: INCLUSIVEの事業としても、著名な有識者の方のデジタル発信というのを支援していきましょうということをちょうど取り組んでいたところでした。既存のメディアがもっと頑張らなきゃいけないし、その頑張りをお手伝いをするのが我々の仕事なんですけど、いろんな形のメディアとか、人に対して有益な影響を与える場の形があってもいいのかなというところで、志桜里さんの発言と引退の話を聞いて、居ても立ってもいられなくなったんです。
菅野: ありがとうございます。それが、あれからだからまだ3カ月、4カ月たったところですけれども、こういった形で今日新しいプラットフォームをスタートできて、本当に楽しみにしています。
「政治家は一生政治家」という固定観念が政治家をダメにしている
藤田: そういう意味では、職業政治家ということである必要もないというか、10年間おやりになられたけど、もともとその前は検察でいらっしゃいましたし、政治家になられて、一生政治家をやるのも結構不自然じゃないですかみたいなお話をされていたところも非常に共感しました。確かにそうかもしれないなという、何か新しい切り口をいただいたなと思いました。
菅野: そうですね。政治家って批判される職業だし、それを甘んじて受け止めなければいけない責任も持っているわけですけれども、私も与野党問わずたくさんの政治家と接してきて、やっぱり志はあるわけですよね、社会の役に立とうと。政治家になってもそんなにお金があるわけでもなく、別に権威が手に入るわけでもなく、だけど政治家になるという選択をしたその源には、やっぱり社会に貢献したいという気持ちがある。ただ、それが薄れてきたり、それとは違う行動を取っているかのように見えてしまう共通の根源には、やはり一生政治家を続けないと物事を成し遂げることができないという、政治家の中にある強迫観念だと思うんですよね。
でも、それをいったん取り払って、次の選挙に受かろうが受かるまいが、今自分が政治家として議席をいただいている、この今を最大限利用して社会貢献していくって、そういう形になっていくと、政治家の心の中にある初志みたいなものはちゃんと表に行動で現れてくるはずだと思うんですね。でも多くの政治家が、やはり政治家になると、なり続けることがいわゆるタスクになってきて、辞めるというキャリアを思い描くことができない。そういう状態で、自分の最初の志よりも次の選挙に当選することが優先していってしまう。
それをいったん断ち切るためには、一生政治家というキャリアが当たり前じゃなくて、期間限定政治家というキャリアも同時並行で当たり前になると、一生政治家は嫌だという面白い専門家が政治家にもなれるかもしれないし、またなった以上は自分の最初の目標を達成して、辞めた後は元のキャリアに戻っていく、あるいは新しいキャリアを切り開いていく。そうすると政治って、本当に政治家一人一人の資質がもっと生かせるいい職場、職業になると思っています。でも、仕組みで任期を制限するとか期間限定にするとか、なかなか実現するのは難しかったので、じゃ、まず自分が取り組んでみようかなというところもありました。
政治家として一番仕事をしたと思う時期は後半5年間
藤田: なるほど、新しいロールモデルをつくっていこうということですよね。改めて一応一区切りということで、引退されて数カ月たちましたけれども、少しだけ間が空いた上で、今日新たなこういう取り組みを始めますというフェーズに来ていますが、10年間の議員を振り返ってどうだったんですか。何が実現できたとか、できなかったとかというのをぜひ聞きたいです。
菅野: 約10年で、前半の5年は、いわゆる永田町的には選挙にも熱心な優等生的な議員だったと思うんですね。だからこそ後半の5年の最初のほうで、当時の民進党の政調会長ということで若手から抜擢みたいな報道もされて、それはやはり先輩議員から見ると、しっかり選挙活動もやって、しっかり雑巾がけもやって、そして女性で、永田町のカルチャーからいうと若手ということで政調会長みたいな話だったというふうに私は受け止めているんですけれども、後半になってから、どっちかというと独特の世界というか、ちょっと変わり者みたいな、ちょっと違う行動を取る議員というように映ることも多かったのかなと自分自身は感じています。
でも一方、後半の5年間が、自分の中では一番政治家として仕事ができた期間だったんですね。それはどこか自分の中の意識の転換があって、本当に次の選挙よりも今の政治家としての仕事を完全に優先しようということをやり出したときに、保育園落ちたというフレーズで有名になった待機児童問題というのもありましたし、特定の検察官だけが長く勤められる制度はおかしいよという問題にも取り組みましたし、あとは藤田さんがさっき言ってくださったコロナ禍で、金融庁からの圧力を使って飲食店や、関係の酒屋さんにお酒を出す店と取引したら金出さないよという、ああいうことはやめてくださいということも幾つか実現することができた。待機児童の数は半減しましたし、検察官の特別な定年延長はなくなりましたし、そういったコロナ禍の金融機関を通じた圧力というのも、あの件については撤回されました。
ただ、この仕事って、逆に私が本当に議員だからできたのかなという思いもあったんですよ。議員じゃなくてもできるかもしれない。あるいは議員とか当事者とか、いろいろ問題を指摘してくれる有識者の方とか、そういうプレーヤーがつながって、ネットも利用しながら、いいタイミングできちんとしたエビデンスを持って世の中に訴えることが大事であって、別にその中の議員の役を私が必ずしもやらなくてもいいんじゃないか。そういうプレーヤーをいろんな人がかわりばんこに担っていってもいいんじゃないかな、そんな思いがしましたね。
藤田: そうですよね。酒屋踏み絵問題。
菅野: 酒屋踏み絵問題。(笑)
藤田: 「酒屋踏み絵問題」と勝手に名前を決めちゃいますけど、あれはちょっと切れ味がよかったというか、党として動いたというよりは、議員さんとか、一国民なのかもしれないですけど、法律をよくお分かりになられている志桜里さんが動いてまさに変わったというところが、政党とかとは違う、何か新しい動きを感じましたけれどもね。
菅野: すごくスピード感がある、ネットを通じた個人と議員の連携プレーだったんですよね。だから、「ちょっとこういう圧力の文書が国から出ています」というのをネットで聞いて、私はそれに対して、え、それ問題でしょうといってネットで発信したら、質問に立つ前に政府が撤回したんです。私が、あれ撤回されたのかと思って、でも、いや、明日たしか質問だけど、じゃ何を質問しようかなということを思っていたら、さらにネット上に、「いやいや、政府は撤回したけれども、都や県レベルでは残っているんですけど」という。またそれをさっと資料を上げてくれる当事者の人たちがいて、え、そうなんだということで、早速国会で西村大臣、当時のコロナの担当大臣に質問したら、「それは知らなかったです」という話になって、その夕方には愛知県の大村知事をはじめとして、「実は政府から指示を受けていたから、そうやって県としても進めていたけれども、もう政府が撤回したなら、うち、やめますよ」といって、もうオセロみたいにちゃんと自治体ごとに撤回、撤回、撤回。
何でしょうね。もちろん国会で質問に立つというのは、すごく課題を可視化する、インパクトのある一つのやり方なんですけれども、やっぱりこれだけインターネットの発信力を誰でも持てるようになると、必ずしもそれだけが問題を追及する、指摘をする場に限られないという、それを何かすごくこの3年、4年ぐらい、様々な問題をいろんな人と連携してやっていくうちに感じましたね。
藤田: そうですね。だからまさに酒屋の現場で起きている問題が国会の質問にスピーディーに反映され、そしてそれが大きな動きとなって、撤回あるいは改善につながっていくということが実現できるんだなということが、ちょっと今まで見たことがなかった事例だなと感じましたね。
政治家にも心理的安全性が確保できる語りの場を
菅野: やはり問題を指摘して改善していく力って、本当にすごく個人にパワーのある時代にもなったと思うので、何かそういう新しいプラットフォームを通じて、各自が持っている情報とか新しい解決策とかいうものを集約して、物事を良くしていく力に変えていけたらなということをすごく思っています。そういう意味では、新しい『The Tokyo Post』という名前のメディアといいましょうか、そういう改善プラットフォーム。合意をみんなでつくって、物事をより良くしていきましょうというプラットフォームと考えていますけど。
藤田: そうですよね。ちなみにどんなものの合意形成を行い、変えていきたいとかというような、何かご希望というか、方針とかはありますか。
菅野: 今まで自分が取り組んできたものを続けていきたいという点もありますし、むしろ新しい分野にも取り組んでいきたいという両面あります。ただ、スタートのときなので、やはり議員として取り組んできた人権外交とか、憲法の問題とか、あとは学校の校則問題とかですね。割と人権問題とか憲法だと、いわゆる伝統的な左、右の論陣に分かれて対立しがちなテーマも、もうちょっとフラットにお互いの意見を自由に述べつつも、相手の意見を聞いて自分が変わっていくことがむしろ評価されるような、そういう対話の場をつくれたらいいなと思っています。
藤田: ちなみに、議員をお辞めになられてすぐ、国際人道プラットフォームを立ち上げましたけれども、どんな活動をされているんですか。
菅野: 議員時代に国際的ないろんな国の国会議員を交えて、人権問題を解決していこうというグループにも入っていましたし、一方日本の国会の中で、それこそ超党派で、ここはみんなで協力し合ってこの人権問題に取り組んでいこうという、この議連の活動もやっていました。やはり何か日本の外交って、どうしても外務大臣とか総理大臣とか政府の一部の人たちがやるものであって、割と国会が蚊帳の外だったり、国会議員が出る幕がなかったり、ましてや民間の出る幕が少なかったりするんですけれども……
藤田: そうですね。
菅野: そうなんですよね。だけど、海外を見ていると、それこそNPOやNGO、法律家とか、様々な民間が中心となって国会を動かしたり、そして国会が政府を動かしたり、すごくシナジーが働いているのも見てきたので、新しい社団法人国際人道プラットフォームの中では、今まで取り組んできた国際的な議連と、日本の超党派の議連と、両方引き続き民間の立場から協力して取り組んでいく予定でいます。今はもう議員を辞めたんですけれども、この前国会の議連のほうには呼んでいただいて、じゃ、山尾さんはこれから菅野さんとして、この議連のアドバイザーで引き続き、要するに事務方をやってくださいと言っていただいたので、その橋渡しを、超党派の橋渡し、政党と政党の橋渡し、そして日本の議連と国際的な議連の橋渡し、両方やっていきたいと思っています。
藤田: ぜひ頑張ってください。『The Tokyo Post』においても、さらにそこに市民との橋渡しといいましょうか、そういう取り組みをもっと広くいろんな人に知ってもらうとか、問題だったり課題とかを知ってもらうところも発信できていけたらいいかなと思っています。
ではここで、『The Tokyo Post』というものに関してのコンセプトや内容の説明をさせていただきたいと思っております。メディアのテーマは、「みんなで創る合意形成プラットフォーム」でございまして、編集長に志桜里さんをお迎えして、各界のオピニオンの皆さんから問題提起及びそこにおける対話をしていただき、そして何がしかの合意形成をして前に進めていこうという、そういうメディアでございます。
具体的なカテゴリーとしては、社会、人道、政治、ビジネス、それから教育、スポーツ、文化といったものを考えております。それぞれカテゴリーについては編集長が設定した、さらに特集(スペシャル)なども取り組んでいきたいと思っています。
想定するターゲットとしては、比較的若い大人、20代~40代中心に、社会変革というとちょっと大上段なんですけれども、少しでも何か良くしていきたいよねということや、そこに課題を持つ世代の皆さんを中心に、何かお役に立てるようなものになったらいいかなと思っているところです。本件に関して、志桜里編集長から何か、よろしければ。
菅野: 今お話しいただいたとおり、私はスペシャル、コラム、ニュースとある中で、できるだけスペシャルとコラムというところに注力しながら頑張っていきたいと思っているんですけれども、今メッセージを画面に出していただいているんですけれども、私、10年政治家をやってきて、自分もだし、接してきた様々な政治家もそうだと私は感じたんですけど、結構政治家とかって奥歯に物が挟まった言い方も多いし、あいまいで抽象的だったりするじゃないですか。
藤田: そういう印象があります。
菅野: ありますよね。それって何でかというと、違う意見の人と触れ合って論争に負ける、論破されるみたいな、そういう評価が政治家も人間なので怖いわけなんですよね。あとは話して、でも、この人の言うこと一理あるじゃんと思って、自分が変わる、意見を変えていくということって、多分すごいいいことだと思うんですけれども、政治家からすると、何かそれはブレた、負けたと見られる。
藤田: 軍門に下ったような。
菅野: そうそう、それで怖いというのがあるんですよね。でも、同じ意見の人と同じことを話していても発展ってないし、むしろ何か違う意見の人と話す勇気を褒めてあげたりとか、違う意見の人と話し合って、お互いが変わって歩み寄っていったという、そのプロセスを褒めてあげたりとか評価をできる、そういう社会に変わっていくと、多分政治家ももっと安心して自由に意見を言えるようになるし、そしてまた何か軍門に下ったとかっておびえずに、お互いが歩み寄って、より多くの人が納得できる結論みたいなものにじりじり近づいていくことができると思うんですね。
それは政治家だけではなくて、いわゆる有識者といわれている人や、もしかしたらネットユーザーを含めた一般の人も、何か論破とか炎上が怖くて、言いたいことがあっても押し込めちゃうみたいな状況が結構もったいない気がしていて。
藤田: 空気を読み過ぎて息苦しいと。
菅野: 息苦しい。何かみんなぐっと言いたいことがあっても言わないみたいな、空気を読んで変えるみたいな、もっとそういう、やっぱり自由に安心して自分の考えを解き放てる場として、この『The Tokyo Post』が役に立てたらいいなと思っています。
藤田: 政治にかかわらず、いろんな有識者の方にご登場いただくということを意識していますけど、非常に今興味深かったのは、実は政治家さんは心理的安全性が担保される発言の場がないということなんですか。
菅野: そのとおりだと思います。逆に言うと、そういった重箱の隅をつつかれるような心配がなくて、本当に本質的な意見として受け止めてもらえるという安心感があれば、多分政治家の言論ってもっと具体化されるし、もっとクオリティーの高い発言っていっぱい出てくると思うんですね。
藤田: 皆さん抑えているんですか。
菅野: 抑えていますよね。すごく薄めているし、抑えているし、やはり玉虫色にしているというのがあるので、それをもっと大丈夫ですと、直接出してもらって大丈夫ですという、そういう場をつくりたいですね。それは政治家に限らず、いろんな言論空間にいる人の中にも、何かそういうちょっと抑えている人っていると思う。
藤田: そうですね、確かに。一市民としては、もっと専門の人の、専門的な正しいというか、そういう意見をいろんな角度から知りたいというニーズが僕はあると思いますけど、意外にそこら辺が、そういうことを実現する場がないということなんでしょうか。
菅野: そうですね。だから、本当にそういう専門家の方で、必ずしも今有名じゃない人でも、例えば、このコロナ禍でこの物の見方ってやっぱり紹介したいなって思えば、そういった方の様々な記事なんかもお伝えをしていきたいなと思っていますし、一方、対談とかイベントでいうと、それこそ先月、このスタジオをお借りしてビジネスと人権というテーマで、政府から中谷元補佐官に、経団連のビジネスと人権担当の方にも、弁護士さんの立場の方から、いわゆる市民社会の立場からも、あとは国際政治の学者さんにも来ていただいて。例えば少し距離がある数名が、それこそ企業の責任について法律をつくるべきなのか、それともまだガイドラインでいいんじゃないのかという、距離がある複数の話し手が1時間なりの話を経て、ちょっとずつやっぱり寄っていくプロセスを見ていただけるというような、この間のイベントもあったんですけど、今回『The Tokyo Post』にテキストが始まっていますが、そういう意外な組み合わせ同士が歩み寄っていく過程だったり、この2人が最後、ここで合意できるんだという予想外の展開だったり、そういうものをこの『The Tokyo Post』の場でファシリテートしていけたらなということも思っています。
藤田: 私も端っこで聞かせていただきましたけど、非常に興味深く、政治家の先生と経団連の方と、いろんなあまり見たことのない組み合わせで非常に多様な視点のお話を聞けたという、あまりそういう場面がなくて非常に刺激を受けました。
菅野: なので、意外な組み合わせと予想外の展開という、これをちょっと目標にしながら、いろんな対談やトークイベントなんかをつくっていきたいなと思っています。
藤田: そうですね。そこが対立ではなくて対話というところは基本のベースにしてというところですよね。ありがとうございます。
じゃ、ここで、ここまでで何か会場ですとか、Zoomからはメディアの記者さんですとか有識者の方にも参加いただいているかと思います。もし何かございましたら、ご質問いただければと思います。
論破より対話、対話からの合意形成を
質問者: 藤田さん、菅野さん、ありがとうございました。朝日新聞デジタルの事業を担当しておりますマツムラと申します。今日はありがとうございます。志桜里さんには朝日新聞デジタルのコメントプラスのコメンテーターもお願いしていて、本当にコンセンサスづくりということにとても関心がおありになる。また、卒業生議員というとてもユニークなお立場、なかなか世の中にテレビタレントさん以外ではあまりないのではないかなというようなお立場で、永田町の社会還元というとても意味のあることだと思います。
私が伺いたいのは、具体的な合意形成のつくり方と、菅野さんが『The Tokyo Post』の上でどのような役割を果たしたいのかというのをもう少し伺いたいんです。合意形成というといろんなやり方があると思うんですけれども、先ほどおっしゃったイベント以外で具体的な何か、例えば大学に入っていくとか、何かもう少し具体的な絵姿を思っていらっしゃることがあったら教えていただきたいのと、あと先ほど、コラムをお書きになるというふうなお話でしたけれども、編集長としてのイメージは、例えばアクティビストみたいな感じなのか、コラムニスト、もしくはファシリテーターのような感じなのか、どのような具体的な行動をイメージしていらっしゃるのか教えていただければありがたいです。あと、このメディアのスタート時期を具体的にいただければありがたいです。
菅野: 最初に私から。マツムラさんありがとうございました。私としては、ファシリテーターをメインに目指したいなとは思っているんですけれども、朝日新聞のコメントプラスにもコメントの場をいただいているとおり、やっぱり自分自身も発信し、そして活動していきたいという思いが多分抑えられないと思うので、そういう意味で、やはり物を書いていくとか、あるいはそれを実現するために活動していくとか、それも湧き出てくるものがあると思いますので、やっていくんだろうと思っています。
また、合意形成の具体的な姿ってとても難しいんですけれども、私自身が特に政治家の最終盤のときに、人権外交というテーマで超党派の議連をつくったり、あるいは国会の憲法審査会という場で超党派の議論に参加をしたりしている中で、議論の前提として相手の意見を尊重するという共有空間ができたとき、すごく違う政党の議員も、違いを探すんじゃなくて、おのずと共通点を探そうとしていくという、やっぱり議員の中で何か変わるんですよね。
それは議員だけじゃないことだと自分自身で思っていて、イベント以外の場でという話もありましたけれども、イベントと名付けるかどうかは別として、例えば今予定していますのは、仮なんですけれども、今月28日に人権外交というテーマで、それこそ本当に超党派の議員をお招きして、そして本当に建設的な意見交換をしてもらうということで、ファシリテートもやらせてもらおうと思っています。
そういう中で、最後に各スピーカーに私が聞いてみたいなと思っているのは、それこそ人権外交というテーマって政党間で距離もあるわけですけれども、例えば、このイベントを通じて何が合意できたと思いますかということを各スピーカーに聞いて、可視化していきたいなと考えています。
藤田: ちなみに、メディアですけども、本日からオープン、リリースしております。
非常に視点として面白いというか興味深いところで、コラムニストですか、アクティビストですかというところなんですけど、私としては、運営会社としてはなんですけども、全部やってくださいと思っています。もしかしたらアクティビスト2.0というか。アクティビストって何かややこしい人とかというイメージがあると思うんですけど、今コロナなんかで、みんなそれぞれいろんな思いだったりとか、何かこのままじゃいけないよねというのは、メディアパーソン以外にも思った点、いっぱい世の中にあるんじゃないかと思いまして、そういう意味では身近な問題の解決の仕方とか、アクティビストのロングテール化といいましょうか、そういうことができるといろんな個人や家庭対家庭とか、近隣の住民同士とかではない問題というのが解決しやすくなるんじゃないかなと思って。例えばそういうことを議員卒業生である志桜里さんに何かいろいろお手伝いとかいただけるとよろしいんじゃないかなと思っております。
菅野: なので、本当にいわゆるメディアの方が今日聞いてくださって、でも恐らくメディアの現場にいらっしゃるからこそ、メディアとは何なのかということはすごくいろいろ考えていらっしゃると思うんですけれども、私としては、この『The Tokyo Post』は、あえてプラットフォームと名付けながら、本当にいろんな人やいろんな団体やいろんなグループと組みながら、でもどの特定の人にも団体にも与さないという、そういう活動をしていきたいなと思っています。
藤田: そうですね、ぜひ。何かこの後、質問が来るかもしれないので先に言いますと、志桜里さんがまた野党的な視点など何かで与党を突き上げていくとか、そういうことではなくてという感じですね。一市民だったりとかして、解決できる問題とか、議論しなきゃいけない話というのを、少しでも合意形成と対話する場がつくれるといいなと思っています。政治メディアなんですかというと、そうでもないんですよねという感じ。ただ、社会問題が結果的に政治につながることもありますので、なのかなというふうに思っております。
あと、オンライン参加の方でいらっしゃいましたら、何かご質問などもいただけると……ないようですね。ですので、じゃ最後、合意形成。
菅野: そうそう。いろんなことで合意する、できる場面が多かったから連携を今しているわけですけれども、せっかくなので、今日は私と藤田さんでお話をさせていただいて、この2人の間で何が合意できたんでしょうということを明示して終わりたいと思います。はい、セーノ……(それぞれ直筆のボードを出す)
あ、そうですね。私、だから二歩ぐらい踏み出したい感じなんですけど、「論破より対話。対話から合意形成。」と書きました。藤田さんは……
藤田: 「一歩踏み出す」。これまで、デジタルを中心としたメディア事業をいろいろと展開してきましたけれども、もう一歩メディアというか、何かプラットフォームといいましょうか、その一歩先を見てみたいし、取り組んでみたいと思いますし、社会の変革活動といいましょうか、そういうものに関しても一歩踏み出していけたらいいかなと、そんなふうに思いました。
菅野: そうですね。何か実践の場づくりという感じかなというふうに、私も思っています。私が書いたのは、「論破より対話。対話から合意形成。」なんですけれども、私も論破する側になったこともあるし、論破されると嫌だなと思って沈黙するというか、あまりそのことについて話さないという経験もありましたけれども、何か論破の後って本当に何も残らないというか、寂しい景色なんですよね、結構。
なので、「論破より対話。対話から合意形成。」、話すということを相手に勝つ手段ではなくて、その相手と何か新しいものをつくり出す手段みたいな、何かそんな場にしていきたいなと思っています。
藤田: じゃ、ぜひそんな場にしていきましょう。では、以上で本日の新規プラットフォームにおけるご説明会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
菅野: ありがとうございました。