誤解だらけのワイドショーコメントで混乱した方へ〈旧統一教会の解散命令請求Q&A〉【菅野志桜里】

毎日のように、たくさんの方から、旧統一教会に対する解散命令請求について聞かれます。

正確な事実を共有することが大事なタイミングだと思うので、5つの疑問にまとめて、できるだけ分かりやすく答えます。

旧統一教会に対する解散命令請求について質問されることトップ5

Q:テレビで政治家やコメンテーターの一部が、「法的にできない」とか「難しい」と言ってるけど、本当ですか?


A:すべきかどうかという評価は人それぞれ考えが違ってよいと思いますが、法的にできないというのは事実として違います。少なくとも「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」「疑いがあると認めるとき」にはあたるので、宗教法人法78条の2に基づいて、質問権や報告徴収権を使って調査することは法的に十分できます。その結果次第で、法81条に基づいて解散命令請求も十分法的にできうる事案です。「すべきでない」とは言わず「できない、難しい」と言うのは、自分の評価をあえて一般的な事実かのように混同させる言い方で、誤解を招きます。

Q:政治がやらないなら、被害者が解散命令請求すればいいという意見も聞きますが、実際できるのですか?

A:たしかに、解散命令請求は「利害関係人」もできます。そして法人に対して「お金を返せ」というような債権を持っていれば、被害者も「利害関係人」となりえます。でも、このお金が支払われて債権がなくなってしまえば「利害関係人」ではなくなってしまうリスクがあります。そもそも、債権を確定させるために長期の裁判に耐えた被害者に、次は解散命令請求しろというような負担を外野が負わせるのが適切だとも思えません。しかも解散命令請求の前提として、代表者や役員に直接質問したり報告を求めたりして、前提資料を集め分析する権限は所轄庁にしかないのです。とすれば、やはり所轄庁をはじめとする政府がその職責を果たすというのが本筋ではないでしょうか。


Q:できない理由として、法律だけでなく『判例』を理由に説明する人がいるけれど、どういうこと?


A:文化庁宗務課によると、この『判例』とはオウム事件の解散命令について平成7年12月19日にでた高裁決定のことだそうです。解散命令請求のためには『法令に違反』(宗教法人法81条)することが必要なのですが、その『法令』の範囲について、この判例で『刑法等』と言っているから『民法』違反はダメと屁理屈をこねています。でも、『等』に普段は都合よく何でもいれちゃうお役所が、今回ばかりは『等』を無視するのは不思議です。『刑法等』と判例で書かれたのは、刑法以外の法律も入るからに決まっています(たぶん、このオウム事件が刑法違反の事案だから「刑法等」と書いただけ)。そして、何より大事な法律そのものに『法令』と書かれていて、『刑法』に限定されていないのは、限定すべきでないと考えて作られた法律だからです(余りに当たり前のことを書いていますが・・・)。

Q:解散命令制度ってそもそも何のためにあるの?実際、旧統一教会の事案はこれにあたるのでしょうか?


A:さきほどの判例はこの目的について分かりやすくこう言ってます。「法人格を得た宗教団体というのは、この法人格を利用してお金を蓄えたり、蓄えたお金で組織を作り上げたり、場合によってはそれを濫用して法律に違反し公共の福祉を害するような犯罪的、反道徳的・反社会的存在になってしまうことがある。だから、こういう危険を予め防ぎ、また対処しなければならない。そういう存在になってしまった宗教法人への対処の一つとして、法人格を取り上げお金を清算してもらう制度が、この解散命令制度である」。旧統一教会については、その伝道活動や献金勧誘行為が、社会的相当性を逸脱した不法行為(民法709条や715条違反)だと認める民事判例が多数積みあがっています。こう考えると、むしろこの判例というは、旧統一教会に解散命令ができない根拠ではなく、むしろ解散命令制度を働かせるべき根拠になると考えるのが自然です。

Q:解散命令のためには、一部の信者の違法行為で足りるのか、組織としての違法行為がいるのか、旧統一教会には組織としての違法行為があるのか、こんがらがっています。


A:宗教法人による行為そのものであることは必要でなく、社会通念に照らして宗教法人の行為だといえるかどうかが基準になります。これも、先ほどのオウム事件の判例です。
 そして、旧統一教会にこの基準をあてはめてみたとき、まず、そもそも法人としての不法行為だと正面から認定された民事裁判自体が存在します。また、行為を行ったのは信者だけれども、法人としての使用者責任が認められるなどした民事裁判が28件あります。さらに、関連事件の刑事裁判のなかには「役員も販売員も全員が統一教会信者」「手法と信仰と渾然一体となっているマニュアルや講義」「相当高度な組織性が認められる継続的犯行」と認定されたものもあります。その他これまでに、全国の地方組織に過大な献金ノルマが課され、そのノルマを達成するために正体隠しの伝道など全国的に共通の手口が使われていたというような実態も明らかになってきています。こうした事実をもとにすれば、「社会通念に照らして宗教法人の行為」だというべき違法行為があると認定される可能性は十分にあるでしょう。



毎日のように色々な人から聞かれる質問を整理すると、大体この5つになりました。

あまり日常生活に関係してこなかった法律を、現実の社会問題にあてはめてみんなで解決するために参考になれば。

より専門的な解説を読みたくなったという方は、ぜひ昨日(2022年10月11日)発表された、全国霊感商法対策弁護士連絡会の公開申入書にアクセスしてみてください。とても精緻な分析です。

宮城県仙台市生まれ、武蔵野市で育つ。小6、中1に初代「アニー」を演じる。東京大学法学部卒。元検察官。2009年の総選挙に初当選し、3期10年衆議院議員を務める。待機児童問題や皇位継承問題、検察庁定年延長問題の解決などに取り組む。憲法審査会において憲法改正に向けた論点整理を示すなど積極的に発言(2018年「立憲的改憲」(ちくま新書)を出版)。2019年の香港抗議行動をきっかけに対中政策、人道(人権)外交に注力。初代共同会長として、対中政策に関する国会議員連盟(JPAC)、人権外交を超党派で考える議員連盟の創設に寄与。IPAC(Inter-Parliamentary Alliance on China)初代共同議長。2021年11月、一般社団法人国際人道プラットフォームを立ち上げ代表理事に就任。