画像:shutterstock アイススケート
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キム・ヨナも“CAS決定”を批判 ドーピング疑惑ワリエワは資格停止にならず 本日も出場

2022年2月4日に開幕した北京冬季五輪に出場しているフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手のドーピング違反問題で、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は14日、五輪出場継続を認める裁定を発表した。ワリエワは本日(17日)行われる女子シングルフリーに出場する。日本や欧米の関係者からは批判の声が上がっている。

年齢を考慮し出場を認める裁定

共同通信などの報道によると、ロシア人選手のカミラ・ワリエワは前年12月のロシア選手権に出場したが、その際、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)が採取した検体から禁止薬物「トリメタジジン」の陽性反応があった。世界反ドーピング機関(WADA)は五輪開幕後の8日に結果を報告したが、RUSUDAは翌日、ワリエワに科した暫定資格停止処分を1日で解除し、五輪出場の継続を認めた。この対応を疑問視した国際オリンピック委員会(IOC)やWADAがCASに提訴していた。

ロシアは2014年ソチ五輪などで組織的なドーピング違反が発覚したため、国としての五輪参加は認められていない。このため、ワリエワ選手らロシア人選手はロシア・オリンピック委員会(ROC)の選手として個人資格で出場している。

CASは13日夜にビデオ会議方式で聴聞会を開催。その結果を受けて、出場継続を認めたRUSADAの判断は妥当だとの裁定を下した。ワリエワは15歳で、16歳未満には処分を軽減するなど柔軟に対応することを定めたWADAの規定の対象者であることなどを考慮した結果だという。

スポーツ界の枠組みの中でトラブル解決を図る

日本スポーツ仲裁機構によると、CASはIOCによって1984年に設立されたスポーツに関する仲裁機関。スポーツに関連する疑義やトラブルを、国の裁判所ではなく、スポーツ界の枠組み内で解決することを目指している。今回のようなドーピングを巡る裁定だけでなく、出場資格の認定や移籍のトラブルなど、スポーツに関する幅広い紛争を扱っている。

1994年にIOCから独立し、スポーツ仲裁裁判所を運営するスポーツ仲裁国際理事会 (ICAS) が設立された。本部はスイスのローザンヌにある。

ドーピングを巡る裁定では、過去にも家族の不注意で禁止薬物を微量に含んだ水を飲んでしまった選手の事情を考慮し、8年間の資格停止を2年に短縮したことや、検査拒否に問われた選手の処分に対し、検査員の事前の説明が不十分だったとして、処分を取り消した例も過去にはあるという。

今回の裁定も選手の事情や主張を汲んだ上での裁定だとも言えるが、欧米の選手や関係者からは批判の声が上がっている。

米オリンピック委員会のハーシュランドCEOは「公平な場で競っているアスリートの権利を否定するもの」との声明を発表。また、2010年バンクーバー五輪の金メダリストで、元フィギュアスケート韓国代表のキム・ヨナさんは自身のインスタグラムに真っ黒な画像を上げ、「ドーピング違反をした選手は試合に出場できない。この原則は例外なく守られなければならない」と英語で投稿した。

WADAは裁定に対し、「WADAの規定に沿っていない。失望している」との声明を発表。IOCもワリエワ選手が個人種目で3位以内に入った場合、メダル授与の式典を実施しないと発表した。