組織改革(イメージ)画像:shutterstock
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スルガ銀行役員不当解雇判決を「第三者委員会報告書格付け委員会」改革の契機とせよ

6月24日、俗称「かぼちゃの馬車」事件を発端として発覚したスルガ銀行の不正融資事件(※1)に関連して、懲戒解雇となった元役員が当該解雇を不当として訴えていた裁判で、東京地裁がその主張を認めました。

スルガ銀行不正融資事件で役員の懲戒解雇は不当判決

スルガ銀行(静岡県沼津市)のシェアハウス向け不正融資に関わったとして懲戒解雇された麻生治雄・元執行役員専務(60)が、スルガ銀行に地位確認と未払い給与など計約2400万円の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は23日、「解雇は合理的な理由を欠き無効」と判断し、解雇後から定年に当たる60歳まで1カ月当たり50万円を支払うよう命じた

nikkei.com6月24日記事「スルガ銀元幹部の解雇無効 東京地裁、合理的理由欠く」より引用

本件では、特定の個人をスケープゴートに責任逃れを図ったと考えられる銀行の責任はもちろんのこと、銀行のストーリーをバックアップした「危機管理委員会」と「第三者委員会」(※2)の責任も検証されるべきではないでしょうか。さらには、現存する検証システムの一端を担っている「第三者委員会報告書格付け委員会」自体の改革も求められると思います。

「第三者委員会報告格付け委員会」とは、「第三者委員会」が提出した報告書を評価格付けする組織です。どの報告書を格付けするかの選択については下記の通り。

委員会で議論して格付けの対象とする調査報告書を選定します。日弁連ガイドラインに準拠したとするものに限定せず、それ以外にも社会的価値や影響力が大きいと認められるものを広く対象とします。

第三者委員会報告書格付け委員会ホームページ「委員会の運営方針_格付け対象の選択」より引用)

会社側の虚構をバックアップしたのでは?「第三者委員会」の責任を問う

今回「第三者」の名のもとに「一方当事者」である会社側の虚構のストーリーをバックアップする結果をもたらした「第三者委員会」の責任は重く、この報告書(委員長・中村直人弁護士)は、真の「第三者」のもとで客観的に検証される必要があります。

そもそも虚構を見抜けなかったのか? それとも会社におもねったのか? 前者であれば能力の問題、後者であれば資質の問題になるので、その見極めは重要です。こうした見極めをするための委員会は存在するといえば存在しているといえるでしょう。それを「第三者報告書格付け委員会」といいます。

会社用語の本件「危機管理委員会」委員長と「第三者報告書格付け委員会」委員長が同一人物!

「第三者報告書格付け委員会」。その委員構成をみると委員長は久保利英明弁護士。今回、第三者委員会と同様、会社側のストーリーを擁護する働きをした「危機管理委員会」の委員長です。中村報告書を否定することは、つまり久保利報告書を否定することに繋がりかねない。これで公正な格付けができるのでしょうか?

参考:スルガ銀行危機管理委員会による調査結果の要旨

ウェブページをみると、久保利委員長含めて委員は9人しかおらず(うち女性は1人だけ)、メンバーはおおむね固定しています。委員長はスタート時の2014年4月から現在に至るまで8年変っていません。格付け対象にするかどうかは、委員どうしの議論で決める。つまり外部の眼は入らない。という状況です。

弁護士という同業者を「格付け」するというかなり高度の客観性・中立性を保つためには、委員の新陳代謝システムが内製化されていた方がいいし、そもそも格付け対象に入れるかどうかの肝の判断に客観的な視点を担保すべきかと思います。

「第三者委員会報告書格付け委員会」は改革を。今後を注視

委員長挨拶によれば、この格付け委員会の機能は、「第三者とは名ばかりで、経営者の依頼により、その責任を回避し、或いは隠蔽するものが散見されるようになった」ので「腑に落ちない報告書には理由をつけて評価し、公表する」とのこと。

まさに今回のスルガ銀行のような事案で、「第三者委員会」の責任を明らかにするための委員会ではありませんか! この機能を果たすためには、メンバー構成含めた格付け委員会自体の改革が必要だと思います。

さて、今回のスルガ 銀行の「腑に落ちない報告書」は、格付け委員会でどんな扱いをされるのでしょうか? 格付け委員会は組織改革できるのでしょうか? たぶん注目されれば変わるし、注目されなければ変わらないのです。

だから、私は注目します!


(※1)スルガ銀行の不正融資事件

2018年、不動産会社(株式会社スマートデイズ)がシェアハウス「かぼちゃの馬車」をサブリース物件として販売したが、後にオーナーへの賃料支払いが滞り経営破たんが表面化した。さらにスマートデイズからオーナーを斡旋されたスルガ銀行が、書類を改ざんするなどしてローン審査を通した不正融資が多数発覚。被害オーナーたちは、スルガ銀行の不正融資に焦点をあて争った。2020年3月、スルガ銀行がオーナーから物件を引き取り実質ローンの帳消しをすることで和解が成立している。

(※2)「第三者委員会」とは

第三者委員会(以下、「第三者委員会」という)とは、企業や組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合及び発生が疑われる場合において、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会である。 第三者委員会は、すべてのステークホルダーのために調査を実施し、その結果をステークホルダーに公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とする。

(「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」の基本原則より引用)