北東部モロトの外来治療センターで、上腕計測メジャーを使った栄養検査を受ける1歳のアコルちゃん。「赤」が示され、重度の栄養不良と診断された。(ウガンダ、2022年5月撮影) © UNICEF_UN0649389_Rutherford
北東部モロトの外来治療センターで、上腕計測メジャーを使った栄養検査を受ける1歳のアコルちゃん。「赤」が示され、重度の栄養不良と診断された。(ウガンダ、2022年5月撮影) © UNICEF_UN0649389_Rutherford

「世界で8億2800万人が飢餓に直面」とユニセフが報告 コロナ禍で飢餓が急増

ユニセフ(国連児童基金)などは2022年7月8日、2022年版「世界の食料安全保障と栄養の現状」を公表した。世界各国の食料安全保障と栄養摂取状況に関する報告書で、飢餓の影響を受けている人の数が、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、世界全体で1億5,000万人増加し、2021年には8億2,800万人に達したとしている。

4,500万人の乳幼児が栄養不良で命の危機に

ユニセフと国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国連世界食糧計画(国連WFP)、世界保健機関(WHO)が共同でまとめた。

報告書によると、21年に飢餓の影響を受けていた人は8億2,800万人で、20年より4,600万人増加。19年と比べると1億5,000万人も増加した。15年以降、飢餓の影響を受ける人の割合は、ほぼ横ばいに推移しており、19年に世界人口の8%だったが、20年は9.3%に急増、21年には9.8%に達した。

また、健康的な食生活を送ることができない人の数は20年に31億人に達し、19年から1億1200万人増加した。これについて、ユニセフは新型コロナ感染症拡大による収入減や、感染対策として実施された措置による食料価格高騰の影響だとしている。

子供については、推定4,500万人の5歳未満児が、命を落とす危険性が高い栄養不良の状態に陥っているとみられ、子供の死亡リスクを最大12倍まで高めている。さらに、1億4,900万人の5歳未満児が、慢性的な栄養不足で発育阻害に陥っているという。

2030年になっても世界人口の8%は飢餓の予測

食糧不足や栄養不足の状況は、今後、世界経済が回復したとしても、改善に向かう可能性は低く、2030年になっても引き続き世界人口の8%にあたる6億7,000万人近くが飢餓に直面すると予測されている。この数字は、国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」をもとに、「飢餓、食料不安、栄養不良をなくす」という目標が設定された15年当時の数字とほぼ変わらない。

現在、ロシアによるウクライナ侵攻が続いているが、ユニセフは、両国が穀物や油料種子、肥料の主要生産国であることから、国際的なサプライチェーンを混乱させ、穀物、肥料、エネルギー、栄養治療食の価格を押し上げていると指摘。こうした紛争のほか、気候変動、経済危機が、不平等の拡大と相まって、食料不安や栄養不良の危機を高めていると懸念を表明している。

ユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長は、「現在の前代未聞の危機には、これまで以上の対応が必要だ。多くの子どもたちの命と未来が危機に瀕している今こそ、子供の栄養に対する取り組みを強化する時で、無駄にしている時間はない」と訴えている。