国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは2022年7月4日、ロシアで反戦を訴える活動をした女性アーティストがロシア当局に逮捕され、適切な食事や医療を与えられていないとして、現地の検察官に直接釈放を求める署名運動を始めた。メールやファックスで要請文を送るよう世界中に呼びかけている。
値札を反戦メッセージに変え逮捕
アムネスティによると、逮捕されたのはロシアで人気のクリエーター、アレクサンドラ・スコチレンコさん。スコチレンコさんは22年4月11日、ロシア西部の都市、サンクトペテルブルクのスーパーで商品の値札を反戦メッセージにすり替えたところ、「ロシア軍についての間違った情報を故意に広めた」として、逮捕された。すり替えたメッセージの中には、ウクライナのマウリポリの劇場への空爆で亡くなった人たちについてのメッセージもあったという。
ロシアでは、ウクライナ侵攻後の3月、刑法に「露軍に関する虚偽情報を広める行為」を罪として加え、最大15年の禁錮刑を科すことが決まった。これによって、反戦デモに参加したり、戦争に抗議したりする市民が取り締まりの対象となっている。
スコチレンコさんは作詞作曲家、コミック本の著者として知られ、さまざまなコンサートやセッションを主催するなど、ロシアでは人気のアーティストの一人。鬱に関する著書もあり、精神的な病に対する差別や偏見をなくすことにも貢献している。
特別食が制限され、治療も受けられず
アムネスティによると、スコチレンコさんへの取り調べは当初、午前3時まで続くなど過酷なものだった。さらに彼女には、セリアック病(遺伝的グルテン過敏症)という持病があり、グルテンが含まれる食物を口にすると、栄養吸収不良が起こり、さまざまな症状が現れる。そのため食事をグルテンフリーにすることが必要だが、拘置所ではそうした食事が1日最低1食しか出されず、家族による特別食の差し入れも制限されている。
また彼女には腫瘍があり、放置するとがん化の危険性もあるが、適切な医療も受けられない状態が続いている。
スコチレンコさんの弁護士らによると、彼女の健康状態は悪化の一途をたどっており、一日中、気だるい状態が続いている。また、拘置所の係官や囚人たちからの嫌がらせもあるという。
アムネスティでは、スコチレンコさんの行為は「国際的に認知された犯罪には該当しない」と主張し、すぐに釈放するよう強く要請。釈放されるまでの間、国際基準に沿った健康状態の維持と対応を保障し、必要な医療と食事を提供するよう求めている。
また、同様の要請をサンクトペテルブルクの担当検察官にメールやファックスで送り、圧力をかけるよう世界中に呼びかけている。
アムネスティのホームページでは署名に参加ができる
https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/ru_202207.html