画像:shutterstock 2021年ミャンマー軍事クーデター反対デモ
画像:shutterstock 2021年ミャンマー軍事クーデター反対デモ

「ミャンマーにも学びが閉ざされている人が…」 ICU高校生が覚えた違和感

ウクライナ避難民への支援が日本国内でも広がりを見せる中、国際基督教大学(ICU)がウクライナ人学生の受け入れを表明したことを受け、ICUの附属高校の女子生徒がTwitterで「ミャンマーにも学びが閉ざされている人がたくさんいる」とつぶやいた。彼女と同じように、ウクライナからの避難民に比べ、ミャンマーからの避難民に対する日本の対応が冷たいという声は多い。 (写真shutterstock/2021年ミャンマー軍事クーデター反対デモ)

日本はアジアの一員としてアジアのリーダーに

国際基督教大学(ICU)は2022年3月8日、ニューヨークにある日本国際基督教大学財団(JICUF)と共同で、ウクライナ人大学生を学生として受け入れると発表した。大学とJICUFは、2017年からシリア内戦を逃れたシリア学生も支援しているという。

3月29日のNHKウエブ版によると、ICUが受け入れる学生はウクライナの大学に籍を置く日本語の学習経験のある学生で、数人の受け入れを予定している。受け入れが認められた場合、大学などが日本への渡航費を負担し、キャンパス内にある住宅や生活費なども提供する。NHKは「ウクライナの学生の教育の機会を保障するためにも受け入れを進めたい」との大学の声を伝えている。

野中さんのツイート

この報道を受け、ICU高校1年の野中優那さんが29日、Twitterに「私はICUの高校生だから敢えて言う。ミャンマーにも学びが閉ざされている人がたくさんいる」と投稿。「ミャンマーではクーデター以後、医学生が命を落としたり拘束されたり留学を諦めたりした人がいる。もともと選択肢が少ない中、教育の機会が失われてから、一年以上たつ。ウクライナの報道から日本は先進国の意識が強いと感じる。アジアの一員としてアジアの中でのリーダーシップを発揮する必要がある」と訴えた。

ミャンマーを知ってほしい「ヤンゴンかるた」プロジェクト

ヤンゴンかるた (c)ヤンゴンかるたプロジェクト

野中さんは2019年から2021年3月まで父親の転勤で、家族とともにミャンマーの最大都市ヤンゴンで暮らした。高校進学のために帰国したが、帰国直前の2021年2月に起きたのが軍事クーデターだった。

帰国後、野中さんはニュースで伝えられる軍による市民への弾圧に心を痛める一方で、ミャンマー情勢にあまり関心のない同級生らに違和感を覚えた。そこで、若者をはじめ多くの人にミャンマーのことを知ってもらうことで、ミャンマーで起きていることを「自分ごと」として考えてほしいと、クラウドファンディングによる「ヤンゴンかるた」の制作を思い付いた。2021年11月から始まったクラウドファンディングでは、約3カ月で300人を超える支援者から300万円を超える資金が寄せられた。

ミャンマーの人権侵害に関心が薄いのはなぜ、と野中さん

野中さんは3月2日、プロジェクトの成果を報告するウエブサイトの中で、ウクライナ侵攻について「一年前、ミャンマーの人々が理不尽に弾圧されていく状況を見た私は、いまウクライナで起きていることを他人事とは思えません。内政か侵略かの違いは、関係ありません」と思いをつづった。

そして、「人権が侵害され、そこで生きる人々が戦おうとする状況は同じだと感じます。なのに、人々がロシアのウクライナ侵攻に関心を持ち、ミャンマーのクーデターに対して、関心が薄いのは何故なのでしょうか」と問いかけた。

国内で在日ミャンマー人らの支援を行っている人たちからは、野中さんと同じような疑問の声が上がっている。

全国難民弁護団連絡会議代表の渡辺彰悟弁護士は東京新聞ウエブ版(2020年3月20日付)で、「1990年代まで使われた入管職員の教材には、非友好国と比べ、友好国出身者の難民認定は、相手国との関係から慎重になり得るとの記述があった」と指摘。そうした意識は今も残っており、領土問題などを抱えるロシアには対決姿勢を取りやすいものの、多額のODAを支出し、多くの権益があるミャンマーに対しては政権に配慮する傾向にあるのだという。

渡辺弁護士は、政治や経済に目を向ける日本の入管行政について「ミャンマーやウクライナの問題を機に見直すべきだ」と訴えている。

今後の野中さんの活動は

The Tokyo Post編集部は、野中さんに「ヤンゴンかるたプロジェクト」の今後の展望について聞いた。

「私たちは4月30日に、毎月ミャンマー料理を提供されている団体connectと、コラボイベントを予定しています。場所は、JR新大久保駅ビルのKDC3階のシェアダイニングhttps://kdc-foodlab.com/で行います(※当初予定していた「かもめやキッチン」から変更になりました)。この日からヤンゴンかるたの一般販売を始めます。およそ20個のかるたを限定販売し、当日の売り上げは全額寄付する予定です。また、今後は、ヤンゴンかるたにミャンマー語の翻訳をつけ、日本語を学ぶミャンマーの方に、教材として活用していただけたらと思っています」

44枚の札を翻訳するため、1人1枚割り当てで44人の翻訳ボランティアを5月頃から募集する予定だ。ゆくゆくは、日本の文化や歴史を、ミャンマーで紹介する「日本かるた」も製作していきたいという。

画像:shutterstock (2021年ミャンマー軍事クーデター反対デモ)