画像:shutterstock 国連開発計画(UNDP)ロゴ
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日本の支援受け 人権基準強化のプロジェクト17カ国で開始 国連開発計画

国連開発計画(UNDP)は2022年4月5日、日本政府からの資金提供を受けて、17カ国でビジネス関連の人権基準の改善を図るプロジェクトを開始すると発表した。対象国での人権侵害の改善を図るとともに、日本の企業も人権デューデリジェンスに取り組みやすい環境を整備する。

約7億8千万円を資金提供し人権デューデリジェンスの普及目指す

「人権デューデリジェンス」とは、企業が原材料の調達や生産・製造・販売など事業活動をするなかで、社内や取引先、供給網のなかで起きている強制労働やハラスメント、差別などの人権リスクを特定し、人権侵害の被害を軽減したり予防したりし、救済措置を講じることで、企業の責務の一つであるとの考え方が普及している。欧米諸国では人権デューデリジェンスを法制化する流れもある。

今回のプロジェクトの対象となるのは、ガーナ、インドネシア、カザフスタン、ケニア、キルギス、ラオス、メキシコ、モンゴル、モザンビーク、ネパール、パキスタン、ペルー、タイ、チュニジア、トルコ、ウクライナ、ベトナムの17カ国。各国にあるUNDP事務所が中心となり、「国連のビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」に基づいて人権保護のための制度構築や司法による監視の強化などの対策に取り組む。日本でも、国内企業を対象に、研修や指導を行い、国際取引での人権デューデリジェンスに対する意識の向上を図る。

実施期間は2022年3月から1年間で、日本は約630万ドル(約7億8000万円)を資金提供する。

UNDPは2016年以降、スウェーデンや欧州連合(EU)からの支援を受けて、アジア太平洋地域を中心にUNGPsに基づいた対策の支援プログラムを実施してきた。2020年には、プログラムの規模が拡大され、5地域26か国のUNDP事務所がEUや日本、スウェーデンなどの支援を受けながら、政府、企業、市民社会が共同で対策に取り組んでいる。

各国政府に人権保護と責任あるビジネスへの対策求める

UNDPは、今回のプロジェクトを「これまでのビジネスと人権に関する継続的な活動を補完するもの」と位置づけており、2つの成果が期待できるとしている。

成果の1つめは、日本企業が人権デューデリジェンスを実施できるようになることで、企業は国内外に対し、クリーンな事業運営を証明できるようになる。プロジェクトの活動の中には、UNDPによる日本企業への研修や、実際の取り組みへの支援も含まれる。

2つめは、17の対象国でビジネス関連の人権侵害に取り組むための行動計画や具体的な政策が策定されることで、ビジネスにおいて公平な条件が整備され、より多くの企業が責任あるビジネス慣行を受け入れられるようになる。

UNDPの岡井朝子危機局長は「今回の新規プロジェクトで、UNDPと日本は手を携え、人権基準を守るための企業の取り組みを支援するとともに、各国政府に対し、人権を保護し、責任あるビジネスを促進するための政策と立法の改善を求めていく」とコメントしている。

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