画像:shutterstock
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採用選考でのインターンシップ評価の利用を政府が解禁 学生から不安の声も

政府は2022年4月18日、就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議を開き、学生が仕事を体験するインターンシップでの評価などを、企業が採用選考で活用できるようルールを見直す方針を決めた。今後、採用活動でインターンがより重要視される可能性があるが、学生側からは「就職活動の負担が増えるのでは」との不安の声も聞かれる。

経団連と大学の合意を受け政府も見直しへ

大学生が就職前にキャリア教育の一環として企業などで職業体験をするインターンシップを導入する企業が増えているが、中には就業体験の機会のない短期プログラムや、無償で学生を働かせる「ブラックインターン」もあり、本来の目的を果たしていないケースがあると指摘されている。

また、インターンシップが採用に直結すると、就職活動の長期化や早期化を招くとして、文部科学省と厚生労働省、経済産業省の3省は「採用選考活動開始時期までに企業がインターンシップなどで取得した学生情報は、基本的に広報活動・採用選考活動に使用できない」との考え方を示している。

こうした現状に対し、日本経済団体連合会(経団連)と国公私立大などでつくる産学協議会が4月18日、人材育成に関する報告書を作成。就業体験を行わない場合はインターンシップにあたらないと定義を見直す一方、採用選考を視野に入れた評価材料を取得する目的でインターンシップを実施できることを明記した。

これを受け、文部科学省などの3省もルールを見直す方針を決めた。各メディアの報道によると、2022年度中に新たなルールを取り決め、2024年度に卒業・修了する大学生・大学院生から適用することを目指すという。

「学業に支障が出かねない」との懸念も

日本経済新聞オンライン版(4月18日付)によると、文部科学省など3省がルールを定めていたにもかかわらず、インターンシップの実態は形骸化していたという。特に、日本のルールに縛られない外資系企業を中心に多くの企業で、インターンシップと採用が実質に直結している。

このため、ルールを順守している国内企業からは、「就活ルールを気にしない外資に『採り負ける』」という不満の声が上がっていた。ルール改定によって、こうした不満も解消するとみられるが、同紙は「企業側も学生に選ばれるためには、これまで以上にインターンのメニューを充実させる必要がある。数日のみの『企業紹介』ではなく、実践的な知識や経験を得られるプログラムを提供できるかが問われる」などと指摘している。

経団連の十倉雅和会長も18日の記者会見で「企業としても、社会や企業・職場がどのようなものかを、実務を通じて知る機会を提供すべきであり、就業体験をともなう質の高いインターンシップを普及させていく必要がある」と述べ、インターンシップの本来の目的を果たせるよう企業側の努力も必要だとの考えを示した。

一方、インターンシップが採用と直結すると、就職活動の早期化や学生の囲い込みに拍車がかかり、学業に影響がでるのではないかとの懸念もある。

京都新聞は4月20日付の社説で、「インターンのために、早ければ2年生のうちから準備に追われ、学業をはじめアルバイト、ボランティア活動など学生生活に支障が出かねないと心配する学生や大学関係者もいる」と指摘。「企業側は、学生の授業やゼミなどに影響が出ないよう、日程や場所などを考慮する必要がある。都市部だけでなく、遠方の学生も幅広く参加できるよう工夫してもらいたい」と求めた。