画像:shutterstock 制服学生
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新学期前に東京都が「ブラック校則」廃止 本当に実施される?

東京都教育委員会は2022年3月10日、高校を中心とする東京都立学校で、生徒の下着の色を指定したり、髪の毛を一律に黒く染めさせたりするなどの、いわゆる「ブラック校則」がほとんど廃止されたと発表した。都教委は21年4月、都立学校全校に校則の自己点検を指示。各学校で、生徒と教職員の意見交換や保護者への聞き取りなどが行われていた。

下着の指定や「ツーブロック禁止」が全校で廃止に

校則を見直したのは、都立高校196校の全日制・定時制・通信制全240課程。都教委は、①頭の側面を刈り上げ段差を付ける髪形「ツーブロック」の禁止、②下着の色の指定、③生まれつきの髪の色を一律に黒色に染めさせる指導、④自宅で謹慎させる指導、⑤「高校生らしい」など表現があいまいで誤解を招く指導、⑥生まれつきの髪の色や癖毛の有無などの届け出(任意)の6つの校則を例示し、検討を求めた。

21年4月の段階では、ツーブロックの禁止が24課程、下着の指定が13課程、黒色への染色が 7課程、自宅謹慎が22課程、「高校生らしさ」などあいまいな表現が95課程で校則に盛り込まれていたが、21年12月には全ての学校で廃止された。

髪の毛の色や癖毛を任意で提出させる指導も55課程であり、検討が行われたが、生徒や保護者から継続を望む声があった20課程では、廃止を見送った。

ほかにも、生徒の意見を取り入れて市販のベストやカーディガンを着用できるよう校則を見直した学校や、生徒会が他県の高校の校則を調べて検討する取り組みを行った学校があったという。

「子供たちが主体的になることが重要」と小池知事

東京都教育委員会は今回の取り組みについて、「生徒が社会の一員として自分の学校の校則について考えることが社会参画への意識の醸成を促す」としている。

また、小池百合子都知事は3月11日の記者会見で記者の質問に答え、「生徒や保護者との話し合いを行いながら、それぞれの学校で点検が実施され、時代に合わなくなった項目などが見直されたと聞いている。子供たちが主体的に、意見を出し合って、学校生活のルール作りに関わるのは重要なことであり、学校行事や部活動などにおいても、生徒たち自身が主体的に課題に向き合い、そうした力を身につけていってもらいたい」と述べた。

全国に広がる「ブラック校則」の見直しだが実態は…?

髪型や髪の色などを指定する校則が「ブラック校則」として注目を集めるようになったのは、2017年に大阪府の女子高生が地毛を黒く染めるよう強要されたとして府に損害賠償を求める訴訟を起こしたのがきっかけだった。

訴訟が海外メディアにも取り上げられたことなどもあり、校則について生徒と教師が話し合いをしたり、指導のあり方を見直したりする動きが全国に広がっている。

問題は現場への徹底だ。これまでも三重県などの地方自治体で同様の校則改革が行われた実績がある。教育委員会が各学校に指示しても、相変わらず教師による口頭での禁止が行われる事例も報告されている。

今後は、現場の実態との乖離と、その調査方法や、違反報告があったときの罰則規定などがないことが問題となりそうだ。