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映画業界の性暴力、監督や俳優らの対策や実態調査求める声明相次ぐ

一部の映画監督や俳優から性暴力を受けたと女優らが告発している問題で、映画監督や脚本家、俳優らの間から実態調査や具体的な対策を求める声が相次いでいる。これに対し、大手映画会社で作る日本映画製作者連盟はハラスメント防止策を盛り込んだガンドラインを策定する方針を明らかにした。

性暴力撲滅に第三者機関を

監督から性的関係を強要されたとして告発した俳優と、被害者を支援する映画関係者らが2022年4月27日、「映像業界における性加害・性暴力をなくす会」を立ち上げ、性暴力の実態調査や第三者機関の設置を求める声明を発表した。

会を立ち上げたのは、脚本家の港岳彦さんやカメラマンの早坂伸さん、俳優の石川優実さんや睡蓮みどりさん、映画監督の加賀賢三さんら12人。

声明では、「上下関係や会社間のパワーバランス、ジェンダーギャップなどを背景に、加害者側の横暴を許す制作体制がパラハラを生み出し、その延長線上に性加害・性暴力が起こる」と指摘。そのうえで、「映像業界における性加害・性暴力を可視化し、撲滅するための実態調査に加え、しかるべき第三者機関の設置が必要」だと訴えている。

映画界の性暴力問題については、榊英雄監督から性被害を受けたとする複数の俳優の告発が22年3月、『週刊文春』で報じられた。当時は榊監督の作品、映画『蜜月』の公開直前だったが、脚本を書いた港さんや撮影した早坂さんらは榊監督に性加害について真偽をただしていたという。その後、『蜜月』は公開中止が決まった。

『朝日新聞オンライン版』(4月27日付)によると、榊監督は同紙の取材に対し、代理人を通じて「報道にあるような性的関係を強要したような事実はありません」と否定しているという。

映画の業界団体は「ガイドラインを策定」と表明

「なくす会」とは別に、是枝裕和監督ら映画監督6人でつくる「映画監督有志の会」も「映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対する」との声明を3月18日に公表。4月13日には大手映画会社で作る日本映画製作者連盟(映連)に対し、業界改善に向けた対策を講じるよう提言書を提出した。

「労働環境保全・ハラスメント防止に関する提言書」と題した提言書では、映連として暴力やハラスメントを容認しないと表明するよう求めたほか、ハラスメントの実態調査やハラスメント防止の具体的な対策、第三者機関による相談窓口の設置などを提言した。

これに対して、映連は26日の文書で回答、有志の会はホームページで文書を公開した。

文書では、映連として「性暴力・性加害をはじめとするいかなる暴力や、あらゆるハラスメントについて、決して許されないものであると考えており、これらの行為には、断固として反対の立場をとる」との考えを表明。そのうえで、2019年から経済産業省と連携して、映画の制作現場における働き方の問題解決に取り組んでいると説明し、各種ハラスメントの防止策や各種契約書の取り交わしのルールなどを盛り込んだガイドラインを策定して映画製作現場の環境の改善を図るとした。

この回答について、有志の会は「取り組みを一定評価するとともに、一刻も早く実効性のある制度が実現することを期待したい」となどとコメント。一方で、「具体的な施策や実施時期が明記されていない。映連が危機感を持って主体的に発信、行動するよう提言、協力していきたい」としている。