画像:PRTIMES 大野和士音楽監督
画像:PRTIMES 大野和士音楽監督

平和を願いウクライナ出身作曲家の楽曲をコンサートで演奏4月21日 東京都交響楽団

東京都交響楽団はロシア侵攻によって苦しい日々を送るウクライナの人たちに寄り添い、多くの人にウクライナの芸術文化を知ってもらおうと、4月21日、22日に開催されるコンサートのプログラムに、同国出身のバレンティン・シルベストロフが作曲した「ウクライナへの祈り」を追加すると4月19日に発表した。演奏はYouTubeでも配信する。

YouTubeの配信や売り上げの一部の寄付も

急遽、「ウクライナの祈り」が追加されたのは、4月21日に東京オペラシティコンサートホールで開かれる「都響スペシャル」と翌22日に東京文化会館大ホールで開かれる「第948回定期演奏会Aシリーズ」。同楽団の大野和士音楽監督が指揮を務め、ピアノの藤田真央さん、バイオリンの矢部達哉さんらが出演する。

22日の演奏の模様は楽団の公式YouTubeチャンネルで配信され、コンサートのチケット売り上げの一部は、ウクライナ支援のために寄付される。

東京都交響楽団は1964年の東京五輪の記念文化事業として、翌年、東京都によって設立された。定期演奏会を中心に、都内の小中学生のための音楽鑑賞教室や青少年への音楽普及プログラム、多摩・離島地域での出張演奏、福祉施設への訪問演奏などの活動を行っている。「首都東京の音楽大使」としての役割も担い、欧米やアジアの各国での公演を成功させ、国際的に高い評価を得ている。2021年7月の東京五輪開会式では、「オリンピック讃歌」の演奏を務めた。

演奏で思いをウクライナへ

バレンティン・シルベストロフは1937年、ウクライナの首都キーウで生まれた作曲家。交響曲や大規模な合唱曲をはじめ、弦楽器やピアノのための精緻な小品まで幅広いジャンルの作品を発表している。2022年初めまでキーウを拠点に活動していたが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、3月にベルリンへの避難を余儀なくされた。

2014年2月、キーウで起きた反政府デモをきっかけに親ロシア派のヤヌコービッチ大統領が失脚した際は、政府側の市民への発砲で多くの人が死亡した。このとき、シルベストロフは、抵抗の意志を込めて多くの讃歌、エレジーなどを書き、それらは後に「Maidan cycle of cycles」という曲集にまとめられた。

「ウクライナへの祈り」はその中の合唱曲だが、22年のロシアによるウクライナ侵攻を受け、別の作曲家によってオーケストラ版と室内オーケストラ版に編曲され、現在、原曲の合唱版とともに世界で演奏されている。

大野音楽監督は今回の演奏について「シルベストロフ氏は1960~70年代、エネルギーにあふれた前衛的な作品を発表し続けたウクライナを代表する音楽家の一人。『ウクライナへの祈り』という、2014年の作曲時に、今日をすでに予想していたかのような作品を演奏しながら、私たちの思いをウクライナに馳せたい」などとコメントしている。