調停(イメージ) 画像:shutterstock
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職場のハラスメントに裁判以外で法的解決を 国内初のADRセンター開設

企業のハラスメント対策を支援している一般社団法人日本ハラスメント協会(大阪市西区)は2022年7月1日、ADR(裁判外紛争解決手続)によって職場のハラスメント問題の解決を図る「ハラスメントADRセンター」を開設したと発表した。職場でのハラスメントに特化したADRセンターは国内で初めて。

非公開で早期解決が期待できるADR

ADRとは、裁判以外で法的なトラブルを解決することで、仲裁や調停、あっせんなどの手段がある。「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)」では、国の認可を受けた民間ADRが、公正な第三者となって解決を図れるようになった。ADRは裁判とは違い非公開で、原則1〜4回以内、1~3カ月以内に解決する。

2020年に施行された改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)では、職場でのパワハラ対策が義務付けられ、パワハラに関する労使紛争もADRの対象となった。

今回設立されたハラスメントADRは、当事者と利害関係のないハラスメント問題の専門家を調停人として選任し、相手方との話し合いによって早期の紛争解決を目指す。話し合いを進めるなかで、調停人が弁護士から助言を受けられる態勢もあり、法的な解釈を巡る争点にも対応できる。

企業にもメリットが多いADRの活用

同ADRセンターによると、職場のパワハラやセクハラ、マタハラ、就活ハラスメントによる紛争に対応。調停のための面談は、オンラインでもできる。

調停を申し立てる際、申立人は10万円をセンターに納付するが、申立てが不受理となったときは全額が返還される。相手が調停に応じなかったり、調停が不成立に終わったりした場合は7万円が返還される。

調停が開始されたときは、期日ごとに双方が1万円ずつセンターに納付し、和解が成立したときは、成立手数料を双方で等分に負担してセンターに納付する。

2020年に厚生労働省が行ったハラスメントに関する調査によると、過去3年間でパワハラを受けたと回答した労働者は31.4%にのぼった。過去3年間に従業員からパワハラの相談を受けた企業も48.2%となり、このうち9.2%は相談件数が増加していると回答した。職場環境の整備において、ハラスメント対策は欠かせないものとなっている。

同センターによると、ADRを利用すると、社内で解決できないハラスメント紛争を当事者の精神的、経済的ダメージを最小限に抑えて解決することが可能になるほか、従業員が安心して働ける職場環境を整備できるため、企業は高い社会的評価を得られるようになる。また、企業主体でADRを申し立てることによって訴訟リスクも回避できるという。