フードデリバリーのウーバーイーツの配達員らによる労働組合「ウーバーイーツユニオン」が団体交渉を拒否されたとして、東京都労働委員会に救済を申し立てている。ウーバーイーツ側は「飲食店と配達員のマッチングサービス」だと主張し、配達員を労働者とは認めていない。これについて、弁護士ドットコムニュースが2022年6月5日、同ユニオンを支援する弁護士の反論を掲載した。
労働組合法の「労働者」に該当
ウーバーイーツユニオンが設立された2019年から支援を続けている川上資人弁護士が同ニュース編集部の取材を受け、「配達員は労働組合法上の労働者に該当することは明らかだ」として、ウーバーイーツ側の主張を否定した。
川上弁護士によると、「労働者」の定義は労働基準法と労働組合法では異なり、労働組合法では労働者の範囲を広くとらえている。配達員は雇用契約を結んでいるわけではなく、個人事業主なので団体交渉はできないと考えている人も多いが、「労働組合法は、個人対企業では圧倒的な交渉力格差があって、全く労働条件についての交渉ができないので、それを可能にするという話だ」として、労働組合法上の労働者として認められるのは当然だとしている。
また、「労働組合の活動によって、自由な働き方が失われる」という批判があることに対しても、「1人では交渉力のない人たちが集団で対等な交渉を求めることは、まさに労働組合法が想定していること。自由な働き方が失われるわけではない」と主張した。
「あくまでもマッチングサービス」と会社側は主張
ウーバーイーツユニオンは、事故に遭ったり、けがをしたりしたときの補償や、報酬の基準の明確化、運営の透明性を訴えて、ウーバーイーツ側に交渉を求めているが、運営会社は団体交渉を拒否。ユニオンは東京都労働委員会に団体交渉救済申し立てを行っており、22年11月には命令が出るとみられている。
21年12月9日付の弁護士ドットコムニュースによると、ウーバーイーツ側は「あくまでプラットフォーム上でユーザー(注文者、配達員、飲食店)間をマッチングさせる事業であり、契約関係はユーザー間にある」「(運営会社は)配達の委託はしていない」と主張。発注時に提示された価格が低く不満ならば、「競合サービスを利用するか、ほかの事をすればいい。配達リクエストを拒否することも無視することもできる」などと説明した。
そして、「労組法は古い規制だ。ウーバーイーツユニオンは配達員10万人の利益を代表しているわけではないだろう。真の解決になる別の枠組みを探したほうが良いのではないか」と団体交渉には応じない姿勢を見せた。
こうしたウーバーイーツ側の対応について、川上弁護士は「(配達員が労働者にあたるのは)火を見るよりも明らかで、(会社側が)団体交渉を拒否していることは、理解できない。当然、レピュテーションリスク(風評リスク)も生じるだろう」と話している。