永山 晴子(デロイト トーマツ グループ 評議員)©30%Club Japan
魚谷 雅彦氏(株式会社資生堂 代表取締役 社長 CEO) と永山 晴子(デロイト トーマツ グループ 評議員)©30%Club Japan

女性役員を2030年までに30%へ「30%Club Japan」第二期Chairに資生堂CEO魚谷氏が再任

重要意思決定機関に占める女性割合の向上を目指すキャンペーン組織「30%CLUB Japan」が、2019年5月に発足から第二期を迎える。2022年6月15日に資生堂汐留オフィスで第一期活動の報告と、第二期の新体制と活動指針について記者会見を行った。

第一期は女性役員比率を前倒しで目標達成

Chair:株式会社資生堂 代表取締役 社長 CEO 魚谷 雅彦氏 ©30%Club Japan
Chair:株式会社資生堂 代表取締役 社長 CEO 魚谷 雅彦氏 ©30%Club Japan

「30% Club」とは2010年にイギリスで創設された世界的キャンペーンで、取締役会を含む企業の重要意思決定機関に占める女性割合の向上を目的としている。19の国と地域で展開されており、日本では2019年5月に発足した。「30% Club Japan」は一期3年と定めており、第二期に入る。

2022年6月15日記者会見で、「30%Club Japan」の意思決定機関であるSteering Committeeにて第一期Chairを務めた魚谷雅彦氏(株式会社資生堂 代表取締役社長CEO)が全会一致で再任され、Vice Chairには永山晴子氏(デロイトトーマツグループ評議員)が就任することが発表された。魚谷氏は内閣府男女共同参画会議にも参画するなど政済界への積極的な発信や提携で信任が厚い。

魚谷Chairは、一期における成果として、TOPIX100の取締役会に占める女性割合10%目標(2020年)を2019年には11%で前倒し達成したと報告した。また、活動を担うワーキンググループとして「TOPIX社長会」「インベスター・グループ」「大学グループ」の3つが発足したことにふれ、第二期の3ワーキンググループの取り組み方針を発表した。

魚谷Chairは「30%Club Japanの発足当時2019年30人でスタートし、2022年現在では72名、約2.4倍となった。外資系が中心だったが、現在は日本企業の割合が最も多くなった」と成長中であるという。

「TOPIX社長会」で次期女性役員候補の育成が課題に

「TOPIX社長会」は、TOPIX企業33社の会長・社長と約70名の各社実務推進者であるPMチームで成り、企業のD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進する。

成果の面でも、2021年の取締役会の女性比率は、上場企業全体では7.3%、TOPIX100社では15.3%となったが、「TOPIX社長会」参加企業では21.6%と非常に高く、日本経済界の女性の活躍を牽引していると強調した。

2021年取締役会女性比率 30%Club Japan配布資料より
2021年取締役会女性比率 30%Club Japan配布資料より 

魚谷Chairによると、TOPIX社長会ではトップ同士の本音での議論がなされたといい、日本企業のジェンダーギャップ解消にとって最も重要な課題として「次期取締役を担う女性候補の育成強化」を上げ、第二期では最優先で取り組む方針だとした。

執行責任者が想定していたよりも育っていない要因はどこにあると考えるかという記者の質問に対し、「課長・マネージャーレイヤーの女性比率は高まっているが、その先のステップやキャリアパスの提示ができていないため休職したり退職したりしてしまう。時間をかけて育てていく必要がある。例えば、次期ポジションを決定しているのは男性の上司なので、その男性の上司に後継者を3人出してください、そのうち1人、できれば2人は女性を出してくださいということを(資生堂では)取り組んでいる。そのようなことを参加企業において推進する」と答えた。

「TOPIX社長会」では、男女は異なるというアプローチからの女性育成、例えば独自のキャリアパス形成を促すなどを検討してもよいのではないかという議論がなされたことを示唆した。

トップのD&Iへの強いコミットメントとリーダーシップが不可欠

「男性の中間管理職がポストがとられるという警戒があるのであるのでは」という質問に対しては、「トップの強いコミットメントとリーダーシップが重要」と言い、トップ自らが「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)が重要だ」という意志・指針を明確に示し、時には自ら現場を周り、コミュニケーションを通じて納得腹落ちを促して環境をつくるなど、社内変革への努力が必要だと述べた。

また、TOPIX100+mid400を中心に業種業態も広げていく必要があるという認識を示し、企業に対してはChief D&I Officerの設置など、D&I新組織づくりを推奨していくほか、大学のワーキンググループと取り組む大学生✕TOPIX社長会「パートナーシッププラットフォーム」を通じて、新卒やインターン時点でD&Iを推進していくことも活動に組み込んでいることなどを報告した。

ESG経営の視点からアプローチする

Vice Chair :永山 晴子(デロイト トーマツ グループ 評議員)©30%Club Japan
Vice Chair :永山 晴子(デロイト トーマツ グループ 評議員)©30%Club Japan

Vice Chairに任命された永山晴子氏からは、「最高経営意思決定機関におけるダイバシティ―は企業価値を高めることに貢献していくということを示し、30%Clubの活動を通じて日本経済の変革の一翼を担いたい」と所信表明があった。

第二期の方針として、ESG経営の視点からグローバルでの投資家からの期待の高まりへの対応と企業側の理解促進を掲げている。「有価証券報告書でも女性の管理職比率を開示が見込まれており、男女別賃金の開示も始まる。企業にとっては法律で義務付けられている書類で誰でも見られるものに開示することでアテンションが高まるので、効果を期待している。トップが改めて自分の会社の状況を理解するのではないか」と今後への期待を込めた。

記者会見では、成果は認められるものの、2021年日本のジェンダーギャップランキングは120位という低さにあり、取り組みのスピードを疑問視する指摘も上がった。対して、魚谷氏は「具体的な事例があがっていくことが大事。概念論ではなく、明快な結果で示して、大きなうねりをつくっていきたい。今の状況でいいと思っていない。30%Clubの特徴は企業だけでなく統合的アプローチ。社会の一部である、企業を起点とするステークホルダーで社会を変革していきたい」と意欲を示した。