面接を受ける日本の大学生(イメージ) 画像:shutterstock
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新卒一括採用を批判「通年採用の導入が経済に活力をもたらす」と経済同友会代表幹事

企業による採用活動の「選考解禁日」となる6月1日を前にした2022年5月30日、経済同友会の櫻田謙悟代表幹事は、記者会見で「経済界がキャリア採用、通年採用の数値目標を決めることが必要だ」などと述べ、新卒採用にこだわらない通年採用を本格的に導入すべきだと考えを示した。

通年採用の数値目標設定を提言

記者会見で、「民間調査会社のデータによると、選考解禁日を前に内定率が60%を超えている。就職活動のルールの形骸化がますます進んでいるのではないか」と問われた櫻田代表幹事は「就職活動のあり方について、総論は賛成でも各論で反対となることが形骸化をもたらしたのだと思う」と指摘。「既に6割超が内定している事実については、むしろあるべき姿から考えるべきだ」とし、通年採用を導入する契機になるとの考えを示した。

そのうえで、「例えば、自社でキャリア採用の割合は3分の1を目標にする、などと宣言させる。新卒の内定率が下がるだろうが、むしろ好ましい」とし、企業がキャリア採用、通年採用の数値目標を決めるべきだと考えを示した。

また、「いまだに新卒一括採用をしている日本は、世界で唯一に近い。そして、ゆっくりと坂を下り、貧しくなっているのがこの国のあり様だ」と日本の就職活動のあり方を批判。「卒業後すぐに就職するのが当たり前という働き方から、卒業後の1年間は別の世界を見る、別の仕事をする、あるいは仕事をしながら転職を意識するといったように、いろいろな働き方を奨励していくことが日本経済に活力をもたらす」と述べた。

有言実行で既に通年採用を導入

経済同友会では以前から「将来的には通年採用への移行を目指すべきだ」と主張しており、2012年には通年採用や秋採用を組み合わせた採用の複線化、多様化を提言している。

また、櫻田代表幹事も2019年5月の就任後初の会見で採用のあり方について触れ、「日本は在学中に就職先が決まる割合が世界で圧倒的に高く、珍しい仕組みだ。今後は通年採用を前提に、キャリア採用をメインにするのがいい」と述べている。

実際、櫻田代表幹事が会長を務めるSOMPOグループでは、2020年4月の入社から、通年採用を採り入れた。

2019年6月18日付朝日新聞オンライン版によると、グループの損保ジャパン日本興亜では、総合グローバル職100人のうち、キャリアと通年採用が計40人。エリア職180人のうち、キャリアと通年採用が計30人。ひまわり生命は採用30人のうち、十数人が通年とキャリア採用だったという。

同記事で櫻田代表幹事は「キャリア(採用)や通年採用は、当たり前にやらないと競争力にかかわる。長い目で見ると、そういう方向になるのは間違いない。決まっているのであれば、早くやったほうがいい」などと述べていた。