菅野志桜里
菅野志桜里 The tokyo Post編集長

『The Tokyo Post』巻頭言「みんなで創る合意形成プラットフォーム」

論破の先は焼け野原。だから、論破より対話。対話から合意形成。

「言論の府」といわれる国会で約10年議員をつとめました。

時の総理大臣から議員、学者、当事者など、たくさんの人と議論する機会に恵まれました。

社会をよくしたいという人々の気持ちに直接触れ、共に課題の解決策を探そうと協力し、個人のもつ志と能力の素晴らしさを確信することもできました。

一方で、私的な言論空間には確かに存在した共感が、公的な場に移った瞬間に失われ、冷たい論破の場に変わるということも少なくありませんでした。

「論破」「炎上」という現代の幻への不安が、個々の素晴らしい意見を内心に封じ込め、公的な言論空間への表出を妨げる場面も見てきました。

私自身が、論破する側に立ったこともあったし、論破を恐れて沈黙する側になったこともありました。

時代と地域の交差点ごとに、社会の価値観は異なります。

自分が生を受ける社会は選べないけれど、その社会を変えていくことはできる。

だから人は、社会の価値観を受け止めたり、抗ったり、変化を呼びかけたりしながら、自らが生きていく社会をよくしようと努力します。

そんな一人ひとりの純粋な、真摯な、普遍的な努力が響きあう社会であるために。

言論の目的を「相手に勝つこと」ではなく「共に創ること」に変えよう。

個人の内心に押しとどめられた多彩な意見を言論空間に解き放とう。

自分を曲げずに議論に勝利することより、変化を恐れず合意形成に貢献することが評価される社会へと移行しよう。

そして、言論空間と課題解決の距離を縮めていこう。

そのためにも論破より対話。対話から合意形成。

誰もが、安心して、自分の考えを解き放つことができるプラットフォームを、ここからみんなで創出したいと考えています。

The Tokyo Post 編集長 菅野志桜里