画像:Shutterstock Tik Tok
画像:Shutterstock Tik Tok

SNSで多発する子どもの性被害を防ぐ TikTokがオンライン会議を開催

日本で動画アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営するTikTok Japanは、2022年4月20 日、「SNSでの子供の性被害をなくすために」をテーマに3月に開催したオンライン会議の内容を公表した。専門家からはSNSを通じた性犯罪が多発している現状が指摘され、とりわけ若者への啓発の重要性が議論された。

攻略ゲーム感覚で犯罪意識のない加害者も

TikTok Japanではアプリを利用者が安心して使えるよう、若者の支援に取り組むNPO法人などに「TikTokセーフティパートナー」になってもらい、情報交換や議論をする場として「TikTok Japan セーフティパートナーカウンシル」を設けている。

3月24日にオンラインで開催されたセーフティパートナーカウンシルでは、ポルノ性被害者の支援に取り組んでいるNPO法人「ぱっぷす」の金尻カズナ理事長や総務省、法務省の担当者を招き、SNSを通じて起こる子どもの性被害と対策について議論した。

金尻理事長の基調講演によると、10代の子供の性被害はスマホを使用した自画撮り被害によるものが多いといい、典型的なケースでは、SNS上でのやりとりで加害者と親密になった後、顔の写った写真の要求から、少しずつ性的な写真を要求されるようになり、断るとSNS上に被害者の顔写真がアップロードされたアカウントが公開されたりする。

被害者が加害者に対し「断ると相手を傷つけるのではないか」という心理になることを利用した手口で、一方、加害者には、多数の人にSNSを通じてアプローチし、攻略ゲームのようにやりとりをする傾向がある。「互いの同意の上の行為で犯罪ではない」など加害意識がない加害者も多いという。金尻理事長は「被害者だけではなく加害者や周囲の第三者への働きかけも重要だ」と指摘があった。

TikTok Japanによると、警察庁が公表した「令和3年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況」では、SNSを起因とする被害児童は1,812人で、前年の1,819人から7人減少した。TikTok起因の被害児童数は52人で24人減少。ワーストランキングでは5位にランクインしたが前年の4位からは改善した。

TikTokでは、ダイレクトメッセージ(DM)に関する安全機能を強化しており、16歳未満の利用者のDM機能を利用禁止にしたほか、16歳から17歳のユーザーに対しDMをデフォルトで「オフ」に設定できるようにするなどの改善を図ったという。

SNSは性被害多発地帯との指摘も

基調報告の後の議論では、TikTokが行った改善について、「DMでは、オープンなSNSの空間とは心理的にも差があり、被害に通じやすい。DMの利用禁止は有効な対策だ」という意見があった。

ただ、「TikTokに関してDMの被害はあまり聞かないが、TikTokを始発点に他のSNSやメッセージアプリに遷移していくという抜け道もある。『他の場所に移るのは危険だ』というメッセージをより強く打ち出してもいい」との指摘があり、「遷移の危険性について、繰り返し注意喚起することが必要だ」との意見もだされた。また、「総じて、SNSが『性被害多発地帯』であることが、利用者に伝わり切っていない」との懸念もあった。

こうした被害に子どもが遭わないよう、周囲がどのように介入すべきかについても話し合われ、「インターネット上以外にも相談できる人や場所が存在しているということを示す必要がある。悩む人に寄り添うことが大切だ」「TikTokだけの取り組みには限界がある。業界全体を巻き込んでいくイニシアチブが必要で、TikTokには役割を期待している」といった意見が上がっていた。

TikTok Japanは「今後も具体的な対策を検討し、子供の性被害防止のための取り組みを推進する。業界や団体の垣根を越えて協力、連携し、TikTokを安心して利用してもらえるよう努めたい」としている。