©内閣官房内閣広報室 令和4年7月27日、総理大臣官邸で広島市の松井一實(かずみ)市長、広島市議会の佐々木壽吉(じゅきち)議長、ヒロシマ平和創造基金の宮田俊範事務局長による表敬を受ける岸田総理
©内閣官房内閣広報室 令和4年7月27日、総理大臣官邸で広島市の松井一實(かずみ)市長、広島市議会の佐々木壽吉(じゅきち)議長、ヒロシマ平和創造基金の宮田俊範事務局長による表敬を受ける岸田総理

岸田首相はヒロシマ平和外交を貫けるか NPT演説「核兵器ない世界」から広島サミットへつなげる決意 

岸田文雄首相は2022年8月1日、ニューヨークで開幕した核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議で演説した。岸田首相は核兵器不使用の継続など5本柱の行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」を表明し、「核兵器のない世界」の実現に向けて取り組んでいく決意を示した。

核兵器廃絶への道筋を示す

同会議は2015年以来7年ぶりの開催で、前回は中東の非核化などで意見が対立し、最終文書の採択に至らなかった。このとき、岸田首相は外相として会議に出席したが、被爆地・広島出身ということもあり、日本の首相として初めて同会議に出席した。

演説の中で岸田首相は、ロシアがウクライナ侵略の中で核による威嚇を行うなど「核兵器のない世界」への道のりは「一層厳しくなっている」と指摘。「核兵器のない世界」に向けた現実的なロードマップの第一歩として、日本が「ヒロシマ・アクション・プラン」に取り組むことを表明し、核兵器不使用の継続の重要性を国際社会で共有すべきだと訴え、核兵器国に核戦力の透明性向上を求めた。

また、プランの中では、核兵器数の減少傾向維持のため、包括的核実験禁止条約(CTBT)や核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の議論の活発化に尽力する方針を示したほか、各国の指導者らを積極的に被爆地に招く考えも表明した。

このほか、国連に1,000万ドルを拠出して「ユース非核リーダー基金」を創設し、「未来のリーダーを日本に招き、被爆の実相に触れてもらい、核廃絶に向けた若い世代にグローバルなネットワークを作っていく」とした。

「理想に向けた現実的な第一歩示した」と岸田首相

岸田首相の演説については、佐藤丙午・拓殖大教授が「今、NPTに必要で、求められている内容を具体的に提案した、非常に丁寧でわかりやすい内容だった」とヤフーニュースでコメント。しかし、核兵器禁止条約について触れられず、核保有国と非核保有国との橋渡し役になるとの決意が示されなかったとして、批判的な意見もある。

これについて、演説後の会見で尋ねられた岸田首相は「核兵器禁止条約は、核兵器のない世界を目指す上で出口に当たる重要な条約」「核兵器国と非核兵器国の橋渡し役も大事」としたうえで、「演説の制限時間もあり、具体的にどうやって理想に向けて歩んでいくのかをまず第一歩として示すことこそ大事だという思いでスピーチを作った」と述べた。

また、1年後の23年に予定されているG7広島サミット向けて、「スピーチをサミットにつなげるためにも、今回のNPT運用検討会議で具体的な成果を出せるようしっかり努力していきたい」と日本として会議の成功に向けて協力していく決意を明らかにした。

会議は8月26日まで開かれる。