さまざまなパン 画像:shutterstock
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小麦高騰でパン屋の過半数が値上げ済みと回答 ウクライナの輸出航路確保に期待

廃棄ロスになりそうなパンを通信販売するサービスを展開しているクアッガは2022年7月、小麦などの原材料の高騰を受け、商品の値上げに関するアンケートを実施したところ、すべてのパン屋から値上げをしたか、検討しているとの回答を得たと発表した。小麦の輸出をめぐって、ロシアとウクライナの間で協議が行われており、小麦の価格高騰に歯止めがかかるのではないかと期待が寄せられている。

全ての店が値上げを避けられない状況に

小麦の輸出大国の一つであるウクライナがロシアによる侵攻を受けたことで、ウクライナからの小麦の輸出ができなくなり、世界的に小麦の価格が高騰。食糧不足によって飢餓に陥る人が増加する懸念も生じている。また、原油価格の高騰や新型コロナ禍による国際的な流通の停滞などもあり、食料品の原材料価格も全般的に上昇している。

こうした情勢の中、同社はインターネットで全国のパン屋を対象としたアンケートを実施。73店から回答を得た。

調査結果によると、回答したパン屋すべてが、2022年になって小麦や副材料の仕入れ価格が高騰していると回答。外国産小麦だけでなく、国内産価格も上昇しており、値上がり幅は同じだった。「値上げの影響を販売価格に反映しているか」との質問には、56%が「既に値上げした」と答え、残りのすべての店も「値上げの予定がある」「検討中」という結果だった。

トルコの仲介で黒海での輸出「回廊」設置に期待

ウクライナからの穀物輸出は、主に黒海の海上輸送によって行われているが、現在はロシアが黒海を封鎖し、ウクライナ側も機雷を設置しているため、小麦が輸送できない状態に陥っている。

こうした状況を打破するため、ウクライナとロシア、トルコ、国連の代表がトルコのイスタンブールで協議し、7月13日、黒海にウクライナ産の穀物を輸送する「回廊」を設け、回廊を共同管理することで合意した。

15日付日本経済新聞オンライン版によると、黒海の出入り口にあたるイスタンブールに共同管理センターを設け、仲介役の国連、トルコを含む4者で貨物船の出入りなどを監視する。早期の合意文書への署名を目指して、詳細の詰めに向けた協議を続けて行くという。

ウクライナのゼレンスキー大統領は13日夜のビデオ演説で、協議では一定の進展があったとして「黒海の航行へのロシアの脅威が取り除けたら、深刻な世界の食糧危機を軽減できる」と述べた。

また、ロシアのプーチン大統領は19日トルコのエルドアン大統領と会談後に、ウクライナの穀物輸出停滞問題をめぐる話し合いが行われた13日の協議について「満足している」と述べた。対立する両首脳が前向きな回答をしていることから、輸送再開への期待が広がっている。

ロイター通信によると、協議の内容を受けて、フランスの小麦価格は14日、2%下落した。しかし、輸送ルートが確保されても、ウクライナ国内の農地の一部は、ロシアの攻撃で大きな被害を受けており、ウクライナ産小麦の生産量がもとに戻るには、紛争終了後、数年かかるとの見方もある。