参院選2022 ©The Tokyo Post
参院選2022 ©The Tokyo Post

「選択的夫婦別姓」「同性婚」ジェンダー巡る各政党政策に変化 2022参院選

6月27日「人権に関する政党アンケート2022」を実施した国際人権NGO/認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウがオンライン記者会見を行い、ジェンダーを巡る政策の各政党の回答をまとめた。

記者会見には、ファシリテーターに津田大介氏、パネリストとして明治大学教授・鈴木賢氏、ヒューマンライツ・ナウ副理事長・伊藤和子氏、ヒューマンライツ・ナウ理事長・阿古智子氏、ジャーナリスト堀潤氏、アクティビスト元山仁士郎氏、サイボウズ株式会社代表取締役社長・青野慶久氏、ヒューマンライツ・ナウ事務局長・小川隆太郎氏が登壇した。

ジェンダーを巡る法制化政策では自民の保守性がめだつ結果に

人権政策に関する政党アンケート2022 ©ヒューマンライツ・ナウ
人権政策に関する政党アンケート2022 ©ヒューマンライツ・ナウ

ヒューマンライツ・ナウが参院選を控えた各政党に「人権政策に関する政党アンケート2022」を実施し、6月22日までに回答のあった政党(維新を除く全党)の回答結果を公表した。

ジェンダーに関する項目では、「選択的夫婦別姓」は、自民党が「どちらともいえない」とした以外、全党賛成。LGBTに対する差別解消法や理化促進法の制定は全党が賛成、「同性婚の法制化」は自民党のみ反対。「DV防止法の改正」は全党賛成。「国会議員の義務的クオーター制度(少なくとも30%)に、与党の自民公明が「どちらともいえない」と回答した。その他の党は賛成だった。「選択的夫婦別姓」に関して賛成・反対・どちらともいえないを選ぶ回答に対し、自民党だけが反対とした。無回答の維新を除き、公明党もはっきりと賛成を公表したため、自民を除くほぼ全政党が賛成したことになる。

選択的夫婦別姓に反対する議員を落とす「ヤシの実作戦」を呼びかけ

パネリストとしてオンライン参加したサイボウズ代表取締役社長・青野慶久氏は、2018年に選択的夫婦別姓の実現を求めて国に対し訴訟を起こし敗訴している。

株式会社サイボウズ代表取締役社長・青野慶久氏

青野氏はコメントを求められ

「2018年に裁判を起こしてから、普通のアンケートをとれば約8割が“(別姓が)選べるならいいんじゃないの”といっていて、議論は進んだと思っている。しかし、反対している議員と話すと議論にならない。旧姓の使用を広げればいいなどといわれるが、本人確認が大変になるだけで、海外では通用しない。そうした議員と話をするのは難しいので、この件については、民意で進めるしかない。参院選挙をみていて、僕はとにかく反対している人を顕在化して落とすしかないと考えています」と回答した。

青島氏は「ヤシの実作戦」というホームページを立ち上げ「落選運動」を展開中だ。参院選の530人を全員リスト化し、選択的夫婦別姓、同性婚に反対か賛成か、うやむやかを顕在化。反対の候補は、「ヤシの実」、無回答の候補は「隠れヤシの実」と表記している。

ヤシの実作戦ホームページ ©2021 ヤシの実作戦
ヤシの実作戦ホームページ ©2021 ヤシの実作戦

青島氏は「みんなで見ながら投票してほしい。落選運動というとネガティブかもしれないが、これから結婚を考える若者に関心のあるテーマをわかりやすいワンイシューで訴えて、選挙に向かい合うことができるように」と訴えた。

同性婚に公明党が賛成にまわり、自民のみ反対

同性婚の法制化に対し、公明党は「法制化に向けた議論を進めていきたいと考えています」とはっきりと賛成を表明したところが、変化だった。自民党は唯一の反対となる。自民党は理由として「憲法24条では、婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立すると定められており、現行憲法の下では、同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されておりませんというのが政府の立場であり、わが党も同様に考えています。また、一部自治体が採用した「パートナーシップ制度」について、国民の性的思考・性同一性に対する理解の増進が前提であり、その是非を含めた慎重な検討が必要であるものと考えます」と回答した。

ジェンダーについて詳しい明治大学教授・鈴木賢氏は、「選択的夫婦別姓は民法を変えるか変えないかだけの問題。どちらでもないというのは、法律を作る気はないという回答。選挙の時に印象を良くするためにあいまいにする曖昧戦略はやめるべきだ」と強く批判した。

また、同性婚に関しては大きな変化を感じるとして、「公明党が同性婚にはっきりと賛成にまわったことは大きい。自民党以外の政党はすべて賛成ということになった。自民党の反対の理由を憲法24条で同性婚の定めがなく、現行憲法では難しいと回答したが、24条は同性婚の空白であるだけで、婚姻の障害にはならない。空白と禁止は違う。反対なら反対で、理由を述べるべきだ」とした。

記者会見を開いたヒューマンライツ・ナウの伊藤和子副理事長は、夫婦別姓は25年以上前に法案が出されてから止まったままになっていると指摘した。

また、今回のアンケートに関して「自分たちから政策を問う、ということを昨年から始めて継続している。今後も、自分でアジェンダを出して聞いていく流れを作っていきたい」とし、ウクライナ侵略の影響で国防や安全保障が今選挙ではクローズアップされていることに危機感を訴え、「生活に根差した“生きやすさ”のためにジェンダーや多様性は重要(な政策)だ」と締めくくった。