ロシアによる侵攻によって、ウクライナからの小麦の輸出が滞っている問題で、ロシアのラブロフ外相とトルコのチャブシオール外相が2022年6月8日、トルコの首都アンカラで会談した。両国間で黒海に貨物船が通過できる「回廊」を設ける案を協議しているが、ウクライナは回廊が攻撃に利用されることを警戒している。
黒海に穀物輸送の「回廊」設置を提案
8日付日本経済新聞オンライン版によると、チャブシオール外相は会談後の共同記者会見で、回廊設置の条件などについて話し合うため、ロシアとウクライナにトルコ、国連を交えた4者協議をイスタンブールで開催することを提案した。各国が協調して穀物を積んだ貨物船を護送し、武器などの出入りがないことを監視するとの内容で、チャブシオール外相によると、ロシアとウクライナは、回廊の設置自体には賛成しているという。
ラブロフ氏は会見で提案を受け入れる姿勢をみせたが、ウクライナが沿岸防衛のために敷いた機雷の撤去が必要だと主張した。回廊を攻撃に利用しないことは「プーチン大統領が保証している」と述べた。
ウクライナは小麦の輸出国で、国連食糧農業機関(FAO)によると、年間の小麦輸出量は世界の1割を占める。しかし、黒海がロシアによって封鎖されているため港から輸送できず、年間輸出量の約半分にあたる2200万トン以上の穀類が足止めされている。
国連世界食糧計画(WFP)も5月の国連安保理で「(ウクライナの)オデーサ地域の港を再開できなければ、世界の食料安全保障に対する戦争を宣言することになる。飢饉と地域の不安定化、世界での大規模な人々の移動をもたらす」などと述べ、ウクライナからの穀物輸出が再開されなければ、アフリカや中東などの多くの人が飢餓に陥り、大量の避難民が発生すると訴えた。
回廊を利用した攻撃を懸念
穀物輸出をめぐって、ロシアとトルコだけで協議が行われたことについて、ウクライナ外務省は7日に声明を発表し、ロシアへの不信感と、ウクライナ抜きの協議への不満を表明した。
コメントでは「ロシアがオデーサやウクライナ南部へと侵攻するために、そうした回廊を利用するとの懸念を、私たちは排除できない。貨物船の航行再開のための効果的な安全の保証が不可欠だ」と主張。ウクライナの港の封鎖解除に向けたトルコの努力を評価しているとしながら、「決定は全ての関係国の参加によって採択されなければならない。ウクライナの利益が考慮されていない合意は拒絶する」と、ウクライナを排除した形での会談に反発した。
そして、沿岸の防衛のための武器の供与や、第三国海軍の関与による黒海のパトロールなどが必要だと訴えた。