ジョー・バイデン米大統領 2022年3月24日NATO臨時サミット2022後の記者会見/ブリュッセル(ベルギー)画像:shutterstock
ジョー・バイデン米大統領 2022年3月24日NATO臨時サミット2022後の記者会見/ブリュッセル(ベルギー)画像:shutterstock

アメリカでウイグル強制労働防止法が6月21に施行 中国は打ち消しに懸命

米国で2021年末に成立した「ウイグル強制労働防止法」が、22年6月21日に施行される。中国の新疆ウイグル自治区で産出・生産された原材料や製品は原則的にすべて強制労働によるものとみなし、米国への輸入が差し止められる。これに対し、中国は「所得が増えた」と話す自治区住民の記者会見を開くなどして、「強制労働」の否定に懸命になっている。

「ウイグルの産品は強制労働によるもの」を前提に

同法は、21年12月に米議会で可決され、バイデン大統領が署名した。21年12月23日付ロイター通信によると、ウイグル族などイスラム教少数派の収容施設がある新疆ウイグル自治区で、少数民族が強制労働などの人権抑圧を受けているという懸念に基づき、同自治区で産出した原材料や製品はもちろん、これを使った製品も輸入を原則的に禁止する。

同自治区からの輸出品はすべて強制労働によるものだという前提で、強制労働によらない産品だということを明確に証明できれば、輸入禁止の適用除外となる。同自治区は綿製品やトマト、太陽光パネルの製造に使われるポリシリコンの輸出国として知られており、衣料メーカーや太陽光発電関連事業者などからは、段階的な導入を求める声もある。

法律の運用に懸念を示す日本企業も多く、米国に対し日本政府は明確な運用指針を求める意見書を提出している。4月30日付共同通信によると、日本政府には、不透明な運用によって輸出が差し止められるなど過度な規制が行われることを回避したいとの考えがあるという。

中国はウイグル地区のイメージアップに躍起

「ウイグル強制労働防止法」について、中国政府は制定当初から激しく反発している。ロイター通信によると、法律の制定を受けて、在米中国大使館の劉鵬宇報道官は電子メールで、「(同法は)真実を無視」しているとし、「国際法や国際関係の基本原則に著しく違反しており、中国の内政問題に対する重大な干渉だ」と非難したという。

6月6日付ブルームバーグ日本語版によると、中国の習近平総書記は新疆ウイグル自治区のイメージを変えようと動いている。

たとえば、新疆ウイグル自治区のトップに馬興瑞党委員会書記を据えた。馬氏は以前、ハイテク企業の集積地、広東省深圳市を統括していた期待の「新星」だという。22年1月に「都市・農村開発の統合加速」や「労働集約型産業の精力的な発展」を重視するビジョンを示し、農業や牧畜業に従事する人たちが「安定雇用と持続的な所得増を達成できるようにならなければならない」と述べている。

また、中国政府は強制労働を否定し、好きなように働けると話すウイグル人による記者会見を定期的に開いている。ある男性は、中国東部の浙江省にある家電会社で月4,000元(約7万8,500円)余りの収入を得ており、出身地の農民と比べ少なくとも5倍を稼いでいると語った。寮の部屋は空調付きで、イスラム教徒向けの食堂もあるという。

これに対し、米国は強硬姿勢を崩さず予定通り同法を施行するため準備を進めている。「新疆ウイグル」が世界中の企業や経済活動にとってのリスクとなることで、今後、中国の人権政策に変化が生じるのか注目される。