ロシアによるウクライナ侵攻によって6割を占領されたウクライナ南部ザポリージャ州で、占領から3カ月を迎えたエネルホダル市のドミトロー・オルロウ市長が2022年6月4日、SNSを使って「ロシア軍に拉致される市民が明らかに増えた」などと現状を伝えた。また、ウクライナのゼレンスキー大統領は5日、同州を電撃的に訪問し、兵士らを激励した。
「無抵抗の市民も拉致」とSNSで発信
ウクライナの国営通信社ウクルインフォルム日本語版によると、オルロウ市長はSNSのテレグラム・チャンネルでメッセージを発信。
オルロウ市長はロシア軍について、「市民への物理的、心理的圧力が強まった。エネルホダル市民の拉致件数が明らかに増えた」と述べ、「地下に放り込まれているのは、活動家や反テロ作戦元参加者、エネルホダル制圧時に検問所で抵抗した者だけではない」などと抵抗していない市民までも拘束していると訴えた。また、「ロシア軍人は扉を破壊し、貴重品など、気に入った物を片っぱしから住居から持ち出している」とロシア軍兵士による略奪が横行しているとした。
さらに「インターネットが長期にわたり遮断されているため、カード支払いがほとんど不可能となっている」とし、「流通する現金がなくなる一方で、物価は高騰。安いのは、他の地域に搬送できなくなった旬の野菜だけだ」と市民の苦しい生活について述べ、これまで中立的な立場を示していた市民の間でもロシアに対する不信が募っているとした。
ゼレンスキー大統領が電撃訪問
ザポリージャ州にはヨーロッパ最大のザポリージャ原子力発電所があり、3月4日にロシア軍によって制圧された。ロシアは同州に親ロシア派の「軍民政権」を置いているが、住民の抵抗運動は活発化しているという。3日付のAFPによると、軍民政権は2日、ウクライナの国有財産の接収に向けて、「解放地域の軍民政権の指導者が命令に署名した」とSNSで発信した。
こうした中ウクライナ大統領府は、ゼレンスキー大統領が6月5日、ザポリージャ州を訪問し、ロシア軍と前線で戦う兵士らを激励したと発表した。6日付の読売新聞オンライン版によると、同州知事らと会議を開いたゼレンスキー大統領は、ロシアの占領は「一時的」との見方を示し、奪還は可能だとの姿勢を強調した。
ゼレンスキー大統領の訪問は、劣勢に置かれている南部地域でも譲歩しない姿勢を国内外にアピールする狙いがあるとみられる。