少子化する中国 画像:shutterstock
少子化する中国 画像:shutterstock

出生率は“30%”も下落 中国の「少子化対策」が失敗し続ける理由

5年連続で中国の出生率が下落を続け、1949年の建国以来最も低い出生率となったことに中国政府は危機感を覚えているが、伝統的中国社会を取り戻したい習近平政権のもとでは女性に皺寄せがいきがちで、出生率回復の兆しは見えてきそうもない。

CNN BISINESS』の記事によれば、今年初めの発表によると、2021年の中国の人口1,000人あたりの出生数は7.5人で、人口減少こそ辛うじて免れたものの、人口増加率は0.0034%で、1959年から61年の大飢饉の時に次ぐ低さだった。

新型コロナウイルスと出生率低下の関係

経済成長に伴って出生率が下がるのは中国だけのことではなく、日本や韓国、東南アジアの国でもこれまでに同様のことは起きてきた。だが、この数年の中国に関しては新型コロナウイルスの感染拡大に対する中国の「ゼロコロナ政策」が関係しているとの見方もある。

4月19日の『フィナンシャル・タイムズ』によると、中国の人口1,000人あたりの出生率は、2019年から2021年の2年の間に30%近く下落。国連人口部のジョン・ウイルモス部長によると、通常では考えられない下がり方で、新型コロナウイルスの蔓延の影響と考えられるという。

米ウィスコンシン大学マディソン校の上級科学者・易富賢氏は、現在も上海で続くロックダウンに見られるように、突然厳しい行動制限を課せられるようなことが続くと、「若いカップルは医療機関にかかれなくなる恐れから、妊娠するのも不安になる」と語る。

裏目に出る政府の政策

外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』は、米外交問題評議会の上級フェロー、カール・ミンツナーの「見通しの暗い中国の人口減少との戦いーー出生率を上げようとする中国政府の努力は裏目に出ている」とする寄稿を掲載している。

これによると、出生率の低下により、1978年には21.5歳だった中国の平均年齢は、2021年には38.4歳となり、急速な高齢化が進んでおり、このまま出生率が下がり続けると、2050年には平均年齢は50歳を超えるという。日本が既にそうであるように、出生率の低下で高齢化が進めば、労働人口の減少による経済成長の鈍化と年金制度の不安定化が起きる。

人口爆発を抑えるために中国が一人っ子政策を導入したのは1979年のことだったが、そのままでは社会が収縮していくことに遅ればせながら気づいた政府は2013年に一人っ子政策を緩和。2016年には正式に一人っ子政策をやめて2人出産を奨励するようになり、2021年には3人出産の奨励に転じた。

だが、出生率低下に歯止めがかからないため、政府はさまざまな対策を打ち出した。例えば、昨年7月には営利目的の塾を違法とし、巨大産業だった教育産業を一掃した。教育負担を軽くして、子供を産んでもらうのが狙いだった。あるいは、地方政府が有給の育児休暇を長くしたり、2人目や3人目を産む女性の育児休暇を延長したり、育児にかかる費用の税負担軽減や、「ベビーボーナス」などの一時金を出す地方自治体もある。

だが、こうした出産奨励策では問題は解決しないとミンツナー氏は書く。「女性の特別な役割」や「夫を支える善き妻や、子供を教育する良き母」の価値を強調し、「家族の一体感」を強調する習近平首相が、古き良き中国伝統社会を理想とする限り、女性は一層出産から遠ざかるだろうと。

離婚率は減ったものの…

実際、共産党政府は離婚を減らそうとしており、今世紀初め裁判所が認める離婚申請は6割だったのに対し、認められる離婚は今や4割に減った。逆に、離婚申請の取り下げは、1970年代の5%から25%に増えたという。2020年には、離婚の「クーリングオフ」も30日間認められることになり、その後の1年で離婚件数が43%も減ったという。

こうしたなか、女性は家で夫を支えるべし、子供を産んで育てるべし、離婚はすべきものではない、婚外子は持つべきではない、といった女性の選択の幅を狭める方向に社会が向かっているとミンツナー氏は書く。

少子高齢化は日本にとっても喫緊の課題だが、世界一の人口を持つ隣国中国が日本を上回る速度で高齢化していく時に世界にどれほどの影響が及ぶかを考えると、他人事と考えるわけにはいかない大きな問題だ。