画像:shutterstock 共働き家庭子育て
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「全世代型社会保障」実現へ議論の中間整理を公表 財源の検討は先送り

全世代が支えあう全世代型社会保障の実現に向けて話し合う政府の「全世代型社会保障構築会議」が2022年5月17日、議論の中間整理をまとめ、政府は同構築本部で決定した。給付が高齢者中心、負担は現役世代中心となっている現在の社会保障の構造を見直すのが目的だが、財源を含めた明確な具体像を示すまでには至らなかった。

「社会保障の担い手の確保が重要」と岸田首相

同会議がまとめた中間整理によると、男性も女性も希望どおり働ける社会を実現するため、育児休業の取得日数の男女差を縮小することや、非正規労働者も希望に応じて育児休業を取得できるよう取得要件を緩和することが必要だと指摘。また、厚生年金や健康保険の加入者を拡大する「勤労者皆保険」の実現に向け、厚生年金に加入する企業規模の要件の撤廃を含めた見直しを行うほか、フリーランスも含めた幅広い労働者が適用される社会保険のあり方を検討すべきだとした。

医療提供体制については、新型コロナへの対応ではかかりつけ医など地域医療が十分機能せず、総合病院に大きな負荷がかかったとして、かかりつけ医の制度の整備や、役割分担や連携を重視した医療・介護の提供体制の実現に向けた改革を進めるとしている。

同構築本部の本部長を務める岸田文雄首相は、会合で「持続可能な経済や社会保障制度を将来世代に伝えていくためには、社会保障の担い手を確保するとともに、男女が希望通りに働ける社会をつくる未来への投資が重要だ」と述べた。

高齢化と人口減少を見据えた社会保障を議論

国の推計では、2023年以降、生産年齢人口が年間50万~70万人減少する一方で、後期高齢者は年間80万人増加。2040年には総人口が約1億1,000万人に対し、生産年齢人口は6,000万人を切る見通しとなっている。中間整理は、こうした高齢化と人口減少が進む2040年ごろの社会を見据えた内容となっており、「社会保障制度の担い手を確保するとともに、男女が希望どおり働ける社会をつくる『未来への投資』が重要」としている。

今回の中間整理では、現在の制度の課題や改革の方向性が中心で、改革を実現するための財源については触れられなかった。同会議が課題だと指摘する「給付が高齢者中心、負担は現役世代中心」の社会保障制度を見直し、世代間で公平な制度にするには、国民の負担増や給付水準の引き下げは避けられない。消費税率の引き上げのほか、高齢者層に対する負担増や給付の引き下げも議論されているが、国民の広い理解を得ているとは言い難い。

こうした国民の負担増を伴う財源確保策に関する議論は、夏の参院選後に本格化する見通しだといい、国政選挙を前に議論を先送りした形となっている。