ロシアによるウクライナ侵略の影響が宇宙開発にも広がってきた。ロシア国営会社が英国衛星の打ち上げを事実上拒否したことがわかり、国際宇宙ステーションISSの活動への影響も懸念されている。こうした状況に、実業家の堀江貴文氏は「政府は今こそ国家安全保障の文脈で民間宇宙開発に力を入れるべきだ」と訴えた。
ロシア国営企業が衛星打ち上げを事実上拒否
英国の衛星通信会社ワンウェブは2022年3月3日、カザフスタンにあるロシア・バイコヌール宇宙基地で予定していた通信衛星打ち上げを延期すると発表した。
日本経済新聞Web版(3月4日付)の記事によると、同社は当初、ソユーズで通信衛星36基を同月5日午前(日本時間)に打ち上げる計画だった。しかし、ロシア国営宇宙開発企業ロスコスモスが2日になって、打ち上げの条件として「衛星が非軍事的な目的であることを示す」「英政府が出資を引き揚げる」の2点を要求。英政府の出資引き揚げは受け入れが難しい条件で、実質的な打ち上げの拒否だという。
このほか、欧州宇宙機関(ESA)とロシアが22年秋に予定していた火星探査計画についてもESAが2月28日、「22年に実施する可能性は極めて低い」との声明を出し、延期が濃厚となった。
今、最も懸念されているのがISSの運用で、接続しているロシア宇宙船の定期的なロケットエンジン噴射で高度約400キロの軌道が保たれているほか、宇宙飛行士らの往還にはロシアのソユーズが使われている。実際、ロスコスモスのロゴジン社長は、「ロシアが米国による制裁に対抗して協力を解消すれば、ISSが地上に落下する恐れもある」とTwitterに投稿した。
「ロケットの完全国産化を」と堀江貴文氏
ウクライナ侵略の影響が宇宙開発にまで及んでいる現状について、宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズの創業者で実業家の堀江貴文氏は3月3日、Webニュースレター「WISS」で「政府は今こそ国家安全保障の文脈で民間宇宙開発に力を入れるべきだろう」とする記事を配信。「ISSへの輸送手段がソユーズに限られていたとしたらISSに滞在する非ロシア系宇宙飛行士は人質に取られていたかもしれない」などと懸念を示した。
堀江氏は「ヨーロッパのアリアンスペース社はフランス領ギアナよりロシア製ソユーズを打ち上げているし、ウクライナのロケット『ゼニート』の一段目もロシア製だ。ソユーズで打ち上げ予定だったワンウェブ衛星は人質に取られてしまった。前澤友作氏も半年ずれたら宇宙飛行がダメになっていただろう」と指摘。「日本のH-2AやインドのPSLV、GSLV、アトラスなどの大型ロケットはかなり先まで打ち上げ予定が決まっている。となると小型衛星打ち上げロケットの需要がにわかに高まってくる。インターステラテクノロジズのロケットも需要が殺到するはずだ」とした。
そのうえで、「国家安全保障の面から見るとロケットを完全に国産化していることは非常に重要。ウクライナにおけるロシア軍の動向をリアルタイムに衛星からは監視できていない。日本にとっても台湾、尖閣有事や北朝鮮や中国の動向監視という意味で防衛上非常に大きな意味を持つ」とし、「数少ない民間ロケットメーカーに対する支援を強化すべきだ」と提言している。