巻誠一郎 (特定非営利活動法人ユアアクション理事長、元サッカー日本代表)
画像:PRTIMES

子供たちの心に焦点をあて復興を話し合う 「災害と人権に関するシンポジウム」を開催

人権の観点から被災した子供たちの「心の復興」について話し合う「災害と人権に関するシンポジウム~子どもたちの心の復興~」(法務省など主催)が2022年1月15日、YouTube上でオンライン開催された。

震災の経験から「心の復興」を考える

震災など災害発生時には、建物や社会インフラの再建や負傷者の救護などが重要な課題となるが、深刻な事態に直面して心が傷ついた人たちのケアや立ち直りといった「心の復興」も忘れてはならない。特に大人に比べて、自分の置かれた状態を客観的に把握するのが難しい子供に対しては、子供の心理の特性を理解し、人権に配慮しながら心の復興を進める必要がある。

今回のシンポジウムは、被災した子供たちの心理的回復をいかにして図るのか、これまでの経験や明らかになってきた課題を踏まえて話し合おうと開催。「みやぎ心のケアセンター」所長で児童精神科医の福地成(ふくち・なる)氏やあしなが育英会東北レインボーハウスの西田正弘所長、NPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長が基調報告をした後、3人がパネリストとなり、パネルディスカッションを行った。福地氏らは、東日本大震災などの被災地で被災した子供たちのケアに取り組んできた経験がある。

また、最後に元サッカー日本代表で、2016年の熊本地震を機に復興支援のためのNPO法人「YOUR ACTION」を立ち上げた巻誠一郎氏がトークショーを行い、復興支援に取り組む思いなどを語った。

子供優先で安心できる環境を

基調報告では、3人がそれぞれの経験を踏まえて、教訓や今後の課題などを報告。福地所長は、親が被災した家の片付けや役所の手続きなどで忙しく、避難所でポータブルゲームに没頭している子供が大勢いたことを紹介し、「すがる相手がいなくゲームに逃避している状態の子供にどう接すればいいのか」と問題提起した。

また、震災後に雨を異常に怖がるようになった少女の症例を紹介。診察に訪れた少女と話をしているうちに、福地所長は少女が「雨が降ると津波が起きる」と誤解していることに気づき、津波が起きる理由を説明すると、少女はハッとした表情をし、「学校の友達に伝えてくる」と言って診察室を出ていったという。このことから「子供であっても、正確な知識を提供することで、気持ちや心を守ることができる」などと話した。

パネルディスカッションでは、被災した子供と接するときに気をつけなければならないことや支援の方法などについて議論。「子供と親ができるだけ一緒にいられるようにすることが大切。順番を待たなくてはならないときも、子供がいる人を優先すべきだ」と、子供が親のそばで安心できる環境作りが重要だとの意見が出された。

貧困家庭の支援もテーマとなり、「コロナ禍による生活の困窮もそうだが、今の日本で貧困に陥るのは、自己責任ではない。あなたが悪いわけではないと伝えることが大切」といった指摘がなされた。