女子中学生(イメージ) 画像:shutterstock
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「自己責任」でバッシング経験の今井紀明さん 生活困窮する10代の支援募る

新型コロナ感染拡大の影響で経済的に苦しく孤立している10代を支援しようと、認定NPO法人D×P(ディーピー)が2022年4月から、毎月定額の寄付をする月額寄付サポーターを募集している。月3,000円の寄付で孤立する10代1人に毎月、食料支援ができるという。理事長の今井紀明さんは高校生の頃、紛争地のイラクへ医療支援のために渡って人質となり、「自己責任」とのバッシングを受けた過去がある。

月3,000円で、困窮する10代1人に食料支援

D×Pは、不登校や高校中退、経済的な困難など、さまざまな境遇の中で孤立する10代が抱える問題の解決を目指して2012年から活動を始めた。定時制や通信制の高校に通う生徒の相談や学業支援、居場所づくり、就業支援などを行っている。

特に新型コロナ感染症が拡大した2020年以降は、外出自粛などの影響で労働時間が減り、困窮する若者が増えている。さらに2022年以降は、ロシアのウクライナ侵攻によって食料品やエネルギーなどが値上がりし、ますます困窮者の生活が苦しくなっている。

このため、D×Pは2020年から親に頼れない15歳〜25歳を対象に、現金給付や食料支援による生活支援を始めた。生活相談を受け、緊急に支援が必要だと判断した場合には現金8万円を給付。約30食の食料や日用品を送るなどして、最長1年3カ月間サポートする。これまで計3,089万円の現金を給付し、延べ5万1,990食の食料を発送してきた。

しかし、支援が必要な若者の増加で、現在150人分の食料支援の予算が不足しているという。D×Pは毎月定額を寄付する「月額定額サポーター」の募集を始めた。寄付額は月額1,000円から選ぶことができ、月額3,000円で1人に1年間の食料支援ができ、1万円では2人に食料支援と給付金3万円を届けられる。

イラクで拘束「自己責任」とバッシングされ引きこもりに

理事長の今井さんは高校生だった2004年、紛争地のイラクで子供たちの医療支援を行おうと同国に入国したが、他のボランティアの日本人らとともに武装勢力に拘束された。武装勢力は、人質の解放と引き換えに復興支援活動にあたっていた自衛隊の撤退を求めた。

事件は「イラク人質事件」として大きく報道された。日本政府の交渉の結果、今井さんらは無事解放されて日本に帰国したが、帰国後「イラク渡航は自己責任」との批判を浴びることになった。

今井さんのもとには、「税金泥棒」などと非難する声が電話や手紙で届き、街でいきなり殴られることもあったという。このため今井さんは対人恐怖症となり、家に引きこもるようになった。

孤立する10代を支援するNPO活動へ

その後、大学に進学した今井さんは友人の支えもあって、当時の出来事を他人に話せるようになり、不登校や高校中退を経験した10代との出会いから、孤立した10代を支援する活動を始めたという。

孤立した10代の多くは、親や教師から否定された経験をしている。今井さんは人質事件で激しいバッシングを受けた経験から、決して相手を否定せずに関与する姿勢を大切にしている。

今井さんは「活動を通して若年層のセーフティネットをつくりたい。10代を孤立させない社会をともにつくっていきましょう」などと協力を呼び掛けている。

月額寄付の申し込みはD×Pの公式サイトから。