国連児童基金(ユニセフ)は2022年6月1日、ウクライナ紛争激化から約100日が経過し、第二次世界大戦以来見られなかった規模とスピードで子どもたちに壊滅的な影響を及ぼしていると発表した。ウクライナの子どもの3人に2人近くが、紛争の影響で避難を余儀なくされているとして、人道的な支援を呼び掛けている。
子どもたちの環境が絶望的に
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が確認した複数の報告によると、ウクライナでは紛争が起きた後、毎日平均2人以上の子どもが死亡し、4人以上が負傷している。そのほとんどは、人口密集地で爆発性兵器が使用されたことによるものだという。保健施設や医療施設、学校など子どもたちが利用する民間インフラも、繰り返し攻撃を受け、破壊されている。ユニセフは「特に激しい戦闘が続くウクライナ東部と南部では、子どもたちを取り巻く環境が絶望的になっている」としている。
また、ユニセフは避難している子どもたちは家族離散や暴力、虐待、性的搾取、人身売買などの被害に遭うリスクがあると指摘。特に保護者らのいない子どもや、家族と離ればなれになった子どもには、安全に過ごせる保護サービスや心理社会的な支援などを緊急に用意しなければならないと訴えている。
紛争続けば「子どもたちの苦しみは続く」と事務局長
ユニセフは協力団体とともに、ウクライナや近隣諸国で、子どもの保護のほか、清潔な水や栄養の確保、教育の提供などを行っている。
ウクライナでは、紛争で被害を受けた地域の約210万人に対して保健・医療物資を配布。水の確保が困難になった地域の210万人以上に安全な水を届けた。また、61万人以上の子どもや保護者に対しメンタルヘルスや心理社会的なケアを行い、約29万人の学童に学用品を届けたという。
難民を受け入れている国々に対しても、国境警備員を対象とした人身売買防止のための研修、学習機会の拡大と難民の学童の学校への受け入れ、ワクチンや医療品の調達、幼児らが遊び、学べる拠点の設置といった支援を続けている。特にモルドバやルーマニア、ポーランド、イタリア、ブルガリア、スロバキアなど主要な移動ルート上には、避難家族に支援やサービスを提供する安全な居場所「ブルードット」を25カ所設置した。
ユニセフは、ウクライナ国内での人道支援活動に必要な資金として6億2,420万米ドル、難民受け入れ国での支援として3億2,470万米ドルを国際社会に要請している。
ユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長は、「即時停戦と交渉による和平が実現しなければ、子どもたちの苦しみは続き、紛争の影響は、世界中の弱い立場にいる子どもたちにも及んでしまう」とするコメントを発表。即時停戦や子どもたちの保護のほか、人口密集地での爆発性兵器の使用や民間インフラへの攻撃の中止などを求めている。