スポーツする女性 画像:shutterstock
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経口中絶薬は「配偶者同意が必要」に女性の人権侵害と批判が殺到

英国の製薬会社から承認申請が提出されている経口中絶薬について社民党の福島瑞穂党首が質問し、厚生労働省は2022年5月17日の参院厚労委員会で、投薬や服薬の際は配偶者の同意が必要になるとの見解を明らかにした。これに対し、SNSでは批判が殺到、現在も批判ツイートが続々投稿されている。

社民・福島瑞穂氏は「女性の自己決定権」の尊重を求める

経口中絶薬は、人工妊娠中絶を目的とした医薬品で、服薬すれば外科処置なしに中絶が可能になる。21年12月に英国の製薬会社が日本での製造販売を認めるよう申請した。

社民党の福島瑞穂党首の公式サイトによると、17日の委員会で福島氏が「人工妊娠中絶の高額な手術費用や男性側の同意を得るとの条件が、望まない妊娠への対応を阻んでいる。新生児遺棄などの痛ましい事件を防ぐために薬は有効だ」などとして、中絶薬への国の対応について質問。これに対し、橋本泰宏子ども家庭局長は、母体保護法を根拠に「服薬での中絶でも配偶者の同意は必要だ」と答弁。「強制性交などによる妊娠については考慮していく」とした。

福島氏は「配偶者の同意がなければ中絶できず、出産を強要されるというのは女性の権利を侵害している」などとして母体保護法の改正を含む対応を求めた。さらに薬の価格についても「中絶費用に莫大なお金が掛かり、病院へのアクセスも困難であることから、赤ん坊を産んで遺棄する事件が後を絶たない」と、薬が安く手に入ることが必要だとの考えを示した。

SNSでは「配偶者同意」に批判が殺到

これを受け、5月19日に「経口中絶薬」や「社民 福島」などのワードがTwitterのトレンド入りし、SNSは批判で埋め尽くされた。

助産師で性教育YouTuberとして人気のシオリーヌさんは「身体の持ち主自身がさまざまな理由から「今は産めない」と判断しているにもかかわらず、なぜ必要な処置を受けるために他者の許可がいるのか。自分の身体のことを自分で決めるという当たり前の権利すら、認められない現状。どうしてこんなことになってしまうんだろう」とツイートし、2.8万件のいいねがついた。

認定NPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹氏は同じくTwitterで「約200カ国中、配偶者同意があるのはサウジアラビア等11カ国のみ。こんな法律とっとと変えよう」と呼びかけるなど、波紋を読んでいる。

「配偶者同意」批判のほとんどが、女性自身が望まない出産を本人の意志だけで止めることができないのは重大な人権侵害だ、という指摘だ。

一方で、経口中絶薬という女性に負担を掛けない中絶”方法”の選択肢が増えるという話と、中絶できる”条件”については分けて議論すべきとする専門家からの指摘もあった。

古い価値観に基づく「母体保護法」の限界

妊娠や出産など生殖に関する考え方を問わず、健康な生活を送り、自己決定する権利が保障される「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ」の観点から、配偶者の同意を必要とする現在の法律の改正を求める声は大きくなっている。福島氏の質問もそうした立場に立っている。

例えば、署名活動サイトchange.orgでは「日本の女性の自己決定権を奪い望まない出産や妊娠継続に追い込む「配偶者同意」を廃止しよう」という署名運動が行われており、5月22日現在7万8,000人以上の署名が集まった。厚生労働省に提出するとしている。

人工妊娠中絶の配偶者同意は昭和23年に制定された「母体保護法」に基づいている。同法では、人工妊娠中絶は、妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害する場合か、暴行もしくは脅迫によって姦淫されて妊娠した場合という条件のもと、さらに「配偶者の同意を得て」可能となると定めている。

昭和25年から令和4年までの間に、女性の高学歴化と社会進出が進み、離婚件数は約2.5倍に増加した。同性パートナーシップ制度が議論され、夫婦間でも性暴力が成立するなど、家族や夫婦の形や価値観は大きく変化している。家父長制が色濃い時代にできた法律が限界を迎え、ひずみを生んでいるのではないだろうか。