画像:shutterstock 病院の廊下
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「強制されず自分の判断で」と保護入院の見直し求める声強く 精神患者の意識調査

精神障害のある当事者らでつくる一般社団法人「精神障害当事者会ポルケ」は2022年5月7日、精神疾患で通院や入院をしている患者を対象に行った入院制度に関する意識調査の結果を公表した。

精神疾患の患者220人から回答

「当事者の視点から期待する―これからの入院制度についての意識調査―」として、2022年4月23日~5月4日の期間にWebフォームを通じて実施。対象は精神科や心療内科に現在通院や入院をしている患者で、220件の回答があった。

ポルケによると、「どのような形の『医療保障』があると良いと思いますか」という問いに対して、最も多かったのは、「医師から説明を受けて安心して医療を受けられる」というインフォームドコンセントで41.9%、次いで「自分が希望するときに受診、医療を受けられる」といった自己決定で28.1%だった。

また、「入院治療は、誰かに強制されるかたちではなく、自分で判断したい」という考えに共感するかどうかを尋ねたところ、「とても共感する」「ある程度共感する」が91.9%を占め、医療保護入院などの本人の同意のないままでの入院措置に対する抵抗感が強いことが分かった。

一方、自傷他害など緊急性がある場合の同意のない入院については、共感を示す回答が全体の74.3%となり、許容する意見が多かった。しかし、自由記述欄には「期間を限定し、弁護士との接見を保証するなど患者の尊厳が守られるべきだ」など慎重な運用を求める意見があり、「入院先の治療内容や態勢によって違いが出る」という意見もあった。また、「人権が無視される」と強く拒絶する意見がある半面、「自分が何をするか分からない状況に陥ったら、入院したほうが安心できる」と容認する意見があるなど、過去の経験などから意見が異なる傾向もあった。

「保護入院の将来的な廃止」への期待強く

厚生労働省では2021年10月に「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」を設置し、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」について検討している。その中で医療保護入院制度についても検討がされ、当初、国から初めて「将来的な廃止を視野に入れて縮減に向けて検討」という文言案が示された。

この文言はその後、「将来的な継続を前提とせず、縮減に向けて検討」と修正されたが、ポルケでは当初の文言を「画期的」と評価。「将来的な廃止」という方向性を強く支持するとしている。

調査では、この文言の修正についての受け止め方も尋ねたが、「変更前が良い」が43.8%、「変更後が良い」が20.0%という結果だった。自由記述欄で肯定的な意見を述べた人を加えると、「将来的な廃止」を求める回答は半数を超えたという。しかし、制度廃止に賛成する人からも「医療保護が必要だと考えられる患者をどうやってサポートしていくのか」など廃止に向けた課題も寄せられた。

ポルケでは、今回の調査報告を活用しながら、患者当事者の権利擁護の活動や制度作りに取り組んでいくとしている。