画像:shutterstock ウクライナ避難民の子ども
画像:shutterstock ウクライナ避難民の子ども

「ウクライナの子どものため紛争の終結を」と安保理でユニセフが訴え

国連児童基金(ユニセフ)のオマール・アブディ事務局次長は2022年5月12日、国連の「ウクライナの平和と安全の維持に関する国連安全保障理事会」に出席し、4月の約1カ月間だけで100人近くの子どもがロシア軍の侵攻によって命を落としたと報告した。「実際の死者数はもっと多いと思われる」とも述べ、「子供たちに必要なのは紛争の終結だ」と訴えた。

紛争によって奪われた「教育を受ける権利」

アブディ次長によると、避難生活を余儀なくされているウクライナの子どもは、何百万人にものぼり、人道支援を受けられない子どもも多い。紛争地域から逃げてきた子どもや親たちは、空腹を強いられ、濁った水たまりから水を飲み、爆弾や弾丸、地雷を避けながら逃げるなどの過酷な経験をし、支援者らに生き地獄のさまを語っているという。

特にユニセフは、子どもたちの教育を受ける権利が侵害されていることに大きな懸念を示している。戦闘が激化している東部地域では、多くの学校が破壊されたほか、避難所や物資の補給拠点、軍事目的などに使用されており、子どもたちは学校に通い授業を受けることができない状況に置かれている。

アブディ次長によると、同国東部でユニセフが支援する89校のうち、少なくとも15校が損傷を受けるか破壊された。人口密集地での爆発物の使用や、空爆によって、全国で数百の学校が攻撃されたとの報告もある。

ロシアの侵攻を受けて全国の学校は一時中断されていたが、3月中旬に1万5,000以上の学校が再開され、そのほとんどがオンラインと対面式とのハイブリッドで行われている。これに対し、ユニセフはオンライン設備をはじめ、教育関連物資の供給を支援している。

食糧と燃料の価格高騰で影響は世界中の子どもたちに

アブディ次長は、ウクライナでの紛争は、世界の食料と燃料の価格が史上最高値まで急騰する中、「世界中の子どもたちにも壊滅的な影響を与えている」とも指摘した。

アフガニスタンからイエメン、アフリカ大陸東部にかけての地域に住む子どもたちは、これまでも、世界中の紛争や気候危機による食料不足に苦しんできたが、ウクライナでの紛争はこうした状況に拍車をかけている。アプディ次長は、「遠く離れた地の紛争によって、子どもたちは大きすぎる代償を払わされている。ウクライナ紛争の影響は、今後も世界中に波及していくだろう」と述べた。

最後にアプディ次長は「子どもたちはこの紛争で、すでに考えられないほどの高い代償を払っている。このうえ、彼らの未来まで犠牲にならないよう、できる限りのことをしなければならない。彼らの未来は危機に瀕している」などと述べ、紛争の早期終結を呼びかけた。