画像:shutterstock 裁判所
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新型コロナ対策の時短命令をめぐり都を訴えた違憲訴訟の判決が5月16日 東京地裁で

新型コロナ感染拡大の防止策として東京都が出した飲食店に対する「施設使用制限命令」は憲法に違反するとして、東京都内で飲食店を経営する「グローバルダイニング」の長谷川耕造社長が都に損害賠償を求めた裁判の判決が2022年5月16日、東京地裁で言い渡される。原告の「命令は営業の自由の侵害」との主張が認められるかどうか注目される。

命令は「営業の自由の侵害」として都を訴える

訴状などによると、新型コロナウイルス感染拡大を防止するために2021年1月、国の緊急事態宣言が発出され、東京都は飲食店に対し営業時間の短縮を要請した。しかし、都内で飲食店などを経営するグローバルダイニング(長谷川耕造社長)は要請には従わないことをホームページに表明。都から個別要請を受けても従わず、時短営業命令を予告されると、都に弁明書を提出し、インターネットでも公開した。

しかし、都は同社の主張を認めず、3月18日に「措置に応じない旨を強く発信するなど、他の飲食店の20時以降の営業継続を誘発するおそれがある」として、緊急事態宣言の期間が終了する21日までの4日間、時短営業するよう命じた。

これに対し、同社は命令を受けた26店舗で時短営業に応じたが、宣言が解除された翌日の22日、時短命令は憲法が保障する「営業の自由」を侵害するとして、4日間、時短営業せざるを得なくなったことの損害として、104円の賠償を都に求めた。

「日本の法の支配や民主主義を問う」と弁護団

賠償請求額を104円としたのは、1日1店舗あたりの損害額を1円としたからだ。26店舗が4日間命令に従ったため、104円となった。

1日1円という額には、長谷川耕造社長や弁護団の「損害賠償が主な目的ではない。法の支配や民主主義に関する問題提起だ」という思いが反映されている。また、「多額の損害賠償が認められれば、都民の税金から支出されることになる」というのも理由の一つだとしている。

弁護団では、訴訟費用を捻出するため、公共訴訟を支援するWebサイト「CALL4」を通じてクラウドファンディングを行っている。目標を1,000万円としていたが、4月18日現在、3,600人から2,500万円を超える支援が寄せられた。日本の裁判クラウドファンディングとしては、過去最高額だという。

クラウドファンディングサイト内の記事によると、都が時短命令を出したのは7業者32店舗で、このうち同社が26店舗。当時、都は時短要請に従わない飲食店を2,000店舗以上確認しており、長谷川社長らは「特定の会社を狙い撃ちした措置で、平等原則に反している」と主張している。また、都が命令の理由で「措置に応じない旨を強く発信」を挙げていることについても、表現の自由の侵害だと主張する。

都は飲食店1店舗あたり1日6万円の協力金を支払うとしたが、同社のような都心の大規模店舗では、損害をカバーすることは到底できない。時短要請は、企業の存続を危うくするものだった。

他の国では飲食店の営業制限は売り上げに応じた補償とセットになっていることが多い。サイト記事によると、フランスでは売り上げが70%以上減少した飲食店に対し、月額20万ユーロ(約2,500万円)を上限に、2019年度の売り上げの20%を給付。ドイツでも前年同月の売り上げ実績の最大75%を支給しているという。

弁護団長の倉持麟太郎弁護士は今回の裁判について、「日本の法の支配や民主主義の脆弱さを今一度問うことが目的」だとし、「司法の場で命令を争うことを媒介に、(社会を覆う)空気や薄弱な法的根拠で決定がなされていくことに違和感などを覚えている人の声なき声を集約していきたい」と話している。

裁判は6回の口頭弁論を行って3月14日に結審。判決は5月16日に東京地裁で言い渡される。