アフガニスタンで実権を握るイスラム主義勢力タリバンが2022年3月23日、この日から予定されていた国内の学校での女子生徒への授業再開を突如、撤回した。国内外のメディアによると、学校の前では再開停止を聞かされ、涙を流す女子学生らの姿が見られたという。
「イスラム法にあった制服を」と再開停止を指示
アフガニスタンでは、2021年8月にタリバンがほぼ全土を掌握。タリバンはイスラム法の古典的な解釈に基づいた支配を行っており、その解釈に基づいて女子教育を制限している。しかし、国際社会からの批判や圧力を受け、アフガンの新年が過ぎた23日から、男女の校舎や時間帯を分けることを条件に女子生徒を含む全員の登校を再開すると発表していた。
しかし、23日当日朝になって、日本の中学・高校生にあたる7年生以上の女子生徒は自宅で待機するよう指示が出されたという。
3月24日付のCNN日本語オンライン版によると、タリバンはイスラム法やアフガニスタンの風習、文化に合った制服がデザインされるまで自宅にとどまるよう指示しているという。
CNNのインタビューに答えた18歳の女子学生は「8カ月ぶりの学校が楽しみで夜も眠れないほどだったのに、私たち女子生徒は今朝、学校の門で追い返された」「クラスメートは全員、泣きながら帰宅した」などと話していた。
「人口の半分が抑圧されている」とマララさん
BBC日本語オンライン版は3月24日、女性の権利活動家でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユサフザイへのインタビュー動画を公開した。
マララさんは「タリバンが女子から教育を遠ざけるため言い訳を続けることは分かっている。制服や徒歩通学などを理由にしているが、これらの言い訳は新しいものではない。タリバンが思い描くアフガニスタンでは女性が教育を受けられない。人口の半分が抑圧されている」とタリバンを批判した。
また、国連児童基金(ユニセフ)のキャサリン・ラッセル事務局長は「すべての子供たちは学校に通うべきです。これは、アフガニスタンの人々が享受すべき平和と繁栄に向け、この国を導く最も確かな方法なのです」などと、アフガニスタンでの女子教育の再開を求める声明を発表した。
声明でラッセル事務局長は「アフガニスタンの事実上の当局による、7年生から12年生までの女の子の学校への復帰を遅らせるという決定は、女の子と彼女たちの未来にとって大きな損失」としたうえで、「この世代全体の女の子たちが教育を受ける権利を否定され、未来を築くために必要なスキルを身につける機会を奪われることになる」とタリバンの決定を批判した。
また、タリバンに対し「これ以上の遅れなしに、女子教育へのコミットメントを尊重することを、強く求める」とし、アフガニスタンの国民にむけても「全土のコミュニティのリーダーたちに、女の子たちの教育を支援するよう訴えます」とした。