画像:ウクライナの リヴィウ に PPS の設置(C)NPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク
画像:ウクライナの リヴィウ に PPS の設置(C)NPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク

ポーランドのウクライナ避難施設に間仕切り設置 建築家の坂茂さんが支援

国際的に活躍する建築家の坂茂さんが代表を務めるNPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)と、同氏の設計事務所、坂茂建築設計が、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻で、ウクライナから避難した人たちを支援するため、隣国ポーランドなどで紙や布を使った「間仕切りシステム(PPS)」の設置を進めている。フランスのパリでも設置を進めるという(写真はNPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワークより提供。3月26日ウクライナのリヴィウにPPSの設置)。

震災を契機に考案されたPPS

坂茂建築設計のホームページによると、間仕切りシステムを設置したのは、ウクライナとの国境に近いポーランド東部の都市ヘウムなど。3月11日、ヘウムの元スーパーマーケット店内に、紙管でできたフレームに布を掛けてできるシンプルな間仕切り「PPS」を設置し、319のスペースを設けた。3月12日にはポーランド南西部のブロツワフ中央駅に、現地の学生らの手によって、60ユニットのPPSが設置された。

PPSは2011年の東日本大震災の際、避難所で暮らす人たちのプライバシーを確保しようと、坂さんが設計、デザイン。2016年の熊本地震や2020年の熊本豪雨などの被災地でも利用された。現在、トンガの噴火・津波、米ケンタッキー州の竜巻、ハイチ地震の被災地でもPPSを使った支援が行われている。

「市の対応の速さに驚き」と坂さん

坂さんの活動は、日本のメディアでも報じられている。

デザインや建築などのニュースを取り上げるWebメディア、テクチャーマガジン(3月22日付)などによると、PPSの設置にはポーランドの建築家らの協力があったといい、紙管は現地の製紙工場から無償で提供を受けた。

現地でPPS設置のニュースが報道されると、他の都市からも設置したいとの要望が寄せられているという。3月24日からは、避難所となる予定のパリ市内の体育館でもPPSの設置が始まった。

3月25日フランスパリでPPS設置会場のボランティアと話す坂さん(C)VAN - Voluntary Architects' Netw 
3月25日フランスパリでPPS設置会場のボランティアと話す坂さん(C)NPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク 

一方、PPSの設置のために現地を訪れた坂さんは、市の対応の速さに驚いたという。「こんな迅速な対応はこれまで見たことがなかった。これまではいつも、紙管間仕切りシステムを受け入れてくれるよう、行政を説得するのに闘わなければならなかった。とりわけ日本では、緊急事態であるにも関わらず、責任者たちは常に閉鎖的で、過去に経験したことのない新しいことを始めることを嫌がり、リスクを取りたがらない」と現地の記者に語ったという。

こうした坂さんの行動にTwitterなどでは、「災害の多い日本の技術が生かされていることに感動。そして、このコロナや戦争の緊急時にさくさくと動けてしまう坂茂氏に拍手です」「坂茂さんの活動素晴らしい 震災の時もそうだけど、避難場所とはいえパーソナルスペースは精神を安定させるためにもとても大切」といった賞賛のコメントが上げられている。