ロシアによるウクライナ侵攻を取材中だったアメリカ人ジャーナリスト、ブレント・ルノーさん(50)がキエフ郊外で銃撃を受けて亡くなったと、欧米などのメディアが2022年3月13日、一斉に伝えた。紛争地域を取材中に死亡・拘束される記者について調べた。
ウクライナ避難民を取材中に記者が死亡
報道によると、ルノーさんはウクライナで取材活動をしている最中に銃撃を受けて死亡した。ウクライナの当局者によると、ロシア軍からの銃撃を受けたといい、他の2人の記者も負傷し、キエフ市内の病院で治療を受けたという。
ルノーさんの死亡が伝えられたことを受け、英誌『タイム』は13日、ルノーさんの死を悼む声明を発表した。それによると、ルノーさんはタイム・スタジオズの企画で難民について取材をするため、ウクライナに滞在していた。そのうえで、同誌は「ウクライナで続く侵攻と人道的危機をジャーナリストが安全に取材できることが不可欠だ」と訴えた。
BBCの日本語版サイトによると、ルノーさんと一緒にいて負傷したアメリカ人カメラマン、フアン・アレドンドさんは、イタリア人記者に襲撃の模様を話した。それによると、避難する人たちを撮影しようと車で向かっていると、検問所を通過したところで攻撃が始まった。運転手が方向転換したが、銃撃は続き、ルノーさんは首を撃たれたという。
ハフポスト日本版(3月14日付)によると、ルノーさんの死亡報道を受けて、フランスのマクロン大統領は、「勇気と理想、すなわち情報を提供する自由によって動かされたすべてのジャーナリストのことを思っています。この自由は、私たちの民主主義にとって基本的なものです」とTwitterに投稿した。イギリスのジョンソン首相も「ブレント・ルノー氏をはじめとする罪のない市民を殺害するプーチンの野蛮な行為は、ウクライナだけでなく全人類を試練に陥れている」とTwitterに投稿し、ロシアのプーチン大統領を強く非難した。アメリカのバイデン大統領のコメントは報じられていない。
記者46人が殺害され拘束者も488人に
今回の事態に限らず、紛争地や政情が不安な国では、毎年多くのジャーナリストが取材中に命を落としている。
国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」は毎年12月に報道活動に関わって殺害されたり、身柄を拘束されたりした記者やスタッフの数を公表しているが、2021年は46人の記者が殺害され、488人が拘束されたという。拘束者の数は1995年の記録開始以降、最も多くこのうち60人が女性だった。
21年12月16日付の時事通信によると、クリストフ・ドロワール事務局長は、記者の拘束は香港を含む中国、ミャンマー、ベラルーシで増加しているしたうえで、「専制の強化や危機の蓄積、政権側に罪の意識がないことを表している」と懸念を表明した。