新型コロナ感染症対策のため、県立高校の文化祭の一般公開見送りが決まっていた埼玉県で、高校生が一般公開を求めて署名活動を展開。約1万7,000人分の署名と陳情書を受け取った県教委は2022年5月24 日、感染防止対策のガイドラインを見直し、十分な感染防止策を取ったうえで一般公開を認めることを決めた。
「3年間、一般公開を経験できないのはつらい」と訴え
署名運動を展開したのは、県立春日部高校生徒会の生徒ら有志。生徒らは文化祭の一般公開の禁止について「このままでは高校3年間、一度も一般公開の文化祭を経験せず高校生活を終えることになる。文化祭は高校生にとって一生の思い出となる行事なのに、一般公開を経験できないのは非常に惜しく、つらいことだ」と考え、署名活動を始めることにした。
5月21日付の埼玉新聞オンライン版によると、同校は男子校で、毎年、県内で最も早い6月初めに文化祭が行われる。現在の3年生が入学した20年は感染症対策のため中止となり、21年は在校生のみでの開催となった。22年は県のガイドラインに沿って同居家族のみの参加を認める方針だった。
生徒らは4月末にオンライン署名サイトでキャンペーンを開始。県のガイドラインの見直しを訴えたところ、約3週間で約1万7,000人の署名が集まったほか、県内の県立高校134校のうち20校から賛同を得られた。このため生徒らは5月20日、他の高校との連名の陳情書と署名を県教育長あてに提出。ガイドラインの見直しを求めるとともに、専門家の意見を聞いて作成した一般公開にあたっての感染予防対策を示した。
「青春を謳歌する姿を見てほしい」と高校生ら
埼玉県は24日に新型コロナの専門家会議を開催し、屋外でのマスク着用の必要性などと合わせ、学校現場での部活動の合宿や文化祭、体育祭の一般公開の是非などについて話し合った。
その結果、新型コロナの新規感染者が減少傾向にあることなどを踏まえ、屋外でほとんど会話をしない場合はマスク着用を求めないなど対策を緩和することを決めた。文化祭についても、十分な感染防止策を取ったうえで一般公開を認めることにした。
24日付のNHKオンライン版によると、県の高田直芳教育長は「今年の3年生は、教育活動が全くないまま2年間を過ごしてきたので、自分たちで安全に学校行事を行うための方法を考え、最後の行事を頑張ってほしい」と話した。
一方、署名活動に取り組んだ春日部高校生徒会は署名サイト上で、一般公開が認められたことを報告。「今回の活動を通して学んだもの、得たものは非常に大きく、心より感謝しています」としたうえで、「徹底した感染対策のもと、より良い文化祭を目指して活動していきます。文化祭で、高校生が青春を謳歌する姿をご覧いただければ幸いです」などとつづった。