男女賃金格差(イメージ) 画像:shutterstock
男女賃金格差(イメージ) 画像:shutterstock

男女賃金格差の開示を義務付け 女性活躍推進法の省令改正で7月から

厚生労働省は2022年6月24日、厚労相の諮問会議である労働政策審議会の分科会を開き、従業員が300人を超える企業に対し、従業員男女間の賃金差を開示するよう義務付ける省令改正案を示し、了承された。初回の開示は各企業の事業年度が終了後、おおむね3カ月以内とし、7月から施行する。

男女の賃金の格差を年1回、比率で公表

女性活躍推進法に基づき、厚労省は現在、省令で従業員300人超の企業に対して「管理職に占める女性割合」や「平均勤続年数の男女差」など15項目を示し、このうち任意の2項目以上を、年に1回、公表するよう定めている。男女の賃金格差は、これに新たに加えられ、公開が必須の項目となる。

厚生労働省は既に、算出・開示方法の案を示しており、賃金の実額を示すのではなく、男女の平均年間賃金を算出したうえで、男性の賃金に対して女性の賃金は何割に相当するかを示す。全労働者を対象とした比較に加え、正規・非正規別に分けた場合の比率も示すことになっている。英国やフランスなど海外でも、割合や指数で公表しているという。

計算対象とする賃金は基本給や超過勤務手当(残業代)、賞与などで、退職手当や通勤手当を含めるかどうかは企業ごとの判断に任される。また、正規労働者は短時間社員を含めて直接雇用している期間の定めがない労働者を指す。非正規はパート、アルバイトなど有期雇用労働者などを指すが、派遣労働者は含めない。

日本の賃金格差は22.5%と隔たり大きく

厚労省によると、日本での男女間賃金格差は年々縮小しているものの、英国やフランス、ドイツなどに比べると、まだまだ大きい。OECDの統計資料によると、日本は2020年で22.5%の開きがあったが、英国では12.3%だった。フランスでは19年で13.9%、ドイツでは18年で11.8%だった。2000年代に入り、男女間の賃金格差を解消していくための法整備が進んでおり、男女間賃金格差の公表について日本は相対的に遅れているという。

賃金格差の要因として、厚労省は女性の役職登用が進まないことや、勤続年数の違いを挙げている。背景には、出産や子育てなどで制約を抱えた女性が正社員として働きにくい雇用環境などがあるとされ、こうしたことが賃金格差として表れていると指摘されている。

この問題では、岸田文雄首相も、国会答弁で「依然として男女間賃金格差が大きい状況も踏まえ、女性活躍推進法のスキームがさらに実効あるものとなるよう、男女間賃金格差そのものの開示を充実する制度の見直しについて、具体的に検討し、速やかに着手していく」と述べるなど早期実現を目指していた。