ジョー・バイデン米大統領 2022年3月24日NATO臨時サミット2022後の記者会見/ブリュッセル(ベルギー)画像:shutterstock
ジョー・バイデン米大統領 2022年3月24日NATO臨時サミット2022後の記者会見/ブリュッセル(ベルギー)画像:shutterstock

経済界はIPEF歓迎ムード 一方でアメリカに「TPP戻って」の声も

首脳会談などのため日本を訪れたバイデン米大統領は2022年5月23日、貿易促進や供給網の強化に向けて13カ国が協力する新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の設立を宣言した。IPEFはバイデン大統領が21年秋、米国が離脱した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に代わる経済連携構想として提案していた。

中国に対抗しアジアで存在感を示す思惑も

IPEFに参加するのは、米国、日本のほか、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの13カ国。米政府によると、全参加国の国内総生産(GDP)が合計で世界の約4割を占めるという。

アジア・太平洋地域の経済連携としては、トランプ前政権が2017年に離脱した環太平洋連携協定(TPP)があるが、米国の離脱後、中国が加盟申請するなどしてアジア経済への影響力を高めようとしている。このため、バイデン大統領はTPPに代わる経済連携としてIPEFを提唱。中国に対抗してアジアで存在感を示そうとの思惑もある。

しかし、ブルームバーグ日本語オンライン版(23日付)は「TPPとは異なり、IPEFに関税引き下げは含まれず、どの部分が拘束力を持つのかも不明で、経済的利益を数値化するのは困難となっている」と指摘。米議会では「過去の通商交渉の典型的な目標だった互恵関税引き下げ交渉が目標に含まれていない」と民主、共和両党から疑問の声が上がっているとして、IPEFの先行きへの懸念を示した。

「日本もルール作りで主導的役割を」と経済界

IPEFの始動について、日本の経済界はおおむね歓迎の意向を示している。

産経新聞オンライン版(23日付)によると、日本経済団体連合会の十倉雅和会長は23日の定例記者会見で、IPEFについて「米国が主導して自由で開かれた経済圏をインド太平洋でつくるとの意気込みの表れ」と指摘。「日本も積極的に参加すべきだ」と述べ、日本がIPEFに参加する方針を支持した。気候変動問題やコロナ対策、重要物資のサプライチェーン(供給網)の構築などにも役立てるべきだとの考えを示す一方で、米国に対し「これを入り口にTPPに戻ってきてほしい」とも述べた。

経済同友会の櫻田謙悟代表も「IPEFは、自由と民主主義、法の支配や人権の尊重といった価値観を共有する国々が、ルールに基づいて、持続可能で安定した経済活動を行う基盤となると期待される」などとするコメントを発表。「日本は、米国との協力関係を一層強固なものにするとともに、この枠組みの実効性を高めるために、米国のパートナーとしてルール作りを主導し、アジア諸国をはじめ、参加国を増やす役割を果たしたい」として、米国とともに積極的に経済ルールづくりで主導的な役割を果たすべきだと訴えた。