職場におけるパワーハラスメントを防止するための措置を企業や事業主に義務づける「パワハラ防止法」が2022年4月1日から中小企業にも義務づけられる。必要な措置を講じなければ是正指導の対象となり、改善が見られなければ企業名の公表もある。
改善が見られなければ企業名公表も
中小企業にも適用されるのは、パワハラ防止措置を義務づけた「労働施策総合推進法」で、通称、パワハラ防止法と呼ばれる。2019年6月に、「女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律」(女性活躍推進法)が改正されたのにあわせ、労働施策総合推進法なども改正され、職場でのパワハラ防止措置が盛り込まれた。
大企業に対しては、20年6月から防止措置が義務づけられたが、中小企業に対しては猶予期間として、22年3月までは努力義務の扱いとなっている。
法律ではパワハラについて、①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えている、③身体的・精神的な苦痛を与えて就業環境を害する、の3つの条件を規定。これらすべてにあてはまる行為をパワハラだとしている。
具体的な対策としては、企業や事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発や、苦情などに対する相談体制の整備、被害を受けた労働者へのケアや再発防止策などを求めている。違反した企業に罰則はないが、適切な対策を講じなければ是正指導の対象となる。さらに、パワハラが常態化し、改善がみられない場合は企業名が公表される。
「パワハラを受けた」は労働者の3分の1
厚生労働省では、2012年から4年ごとに職場のハラスメントに関する実態調査を行っている。2020年10月に行った調査によると、過去3年間でパワハラを受けた経験があると答えた労働者は31.4%で、顧客からの迷惑行為(15.0%)、セクハラ(10.2%)に比べて高かった。
パワハラを受けた後の行動については、「何もしなかった」が35.9%と最も高く、パワハラを知ったあとの勤務先の対応でも「特に何もしなかった」が47.1%と半分近くを占めた。こうしたことから、「会社に訴えても、何もしてもらえない」と諦める被害者が多いことがうかがわれる。
また、「上司と部下のコミュニケーションが少ない」「ハラスメント防止規程が制定されていない」「失敗が許されない」「残業が多い・休暇を取りづらい」といった傾向がある職場ほど、ハラスメントを経験した人の割合が高く、職場環境とハラスメントの多さは関連性が高いことが分かる。
厚生労働省ではハラスメント対策の情報サイト「あかるい職場応援団」で、ハラスメント対策のマニュアルや対策事例などを紹介して、企業に対策を求めている。
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