国境近くでのロシア軍増強で軍事的な緊張が続くウクライナ情勢をめぐり、在ウクライナ日本大使館は2022年2月2日より、ウクライナに滞在する日本人に対し、商用機を使って速やかに出国するよう呼びかけている。
10日から20日の間に軍事演習との情報も
外務省によると、ウクライナとの国境沿いに展開するロシア軍が撤退する動きは依然見られず、米国も「さらに部隊を増強している」と発表している。また、ウクライナの隣国ベラルーシでは、2月10日から20日までロシアと軍事演習が予定されているという情報があり、さらなる緊張の高まりが懸念される。
こうした事態を受け、日本政府は、ウクライナ全土に対してレベル3(渡航中止勧告)の危険情報を出しており、航空便が運航されているうちに、できるだけ早く出国することを強く勧めている。大使館も、ウクライナに滞在する日本人に直接電話やメールをして、出国の意向などを確認。大使館と連絡を取っていない日本人は至急連絡するよう求めている。
日本大使館によると、現在、キエフ、リビウ、オデッサ、ハルキウ、ザポリージャなどの空港からの便は運航中だが、残席数が少なくなっている便があり、安いチケットが売り切れた便も多いという。
独仏らとの交渉続くが、露はNATO拡大に不満
ウクライナ情勢をめぐり、欧米が国境付近からのロシア軍撤退などを求める中、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は7日、モスクワで会談。各メディアが内容を伝えた。
2月8日のNHKによると、会談は5時間を超え、会談後は二人がそろって記者会見。プーチン大統領は「事態打開に向けてマクロン大統領から示されたいくつかの提案は、今後の共同行動の基礎にすることが十分、可能だ」と述べ、協議を継続していくことで一致したという。提案の具体的な中身は明かされなかった。
しかし、同日付の日本経済新聞のオンライン版は「北大西洋条約機構(NATO)を巡って溝が残った」と指摘。NATOの東方拡大停止というロシアの要求を米国などが拒否したことに対し、プーチン大統領は「ロシアの中心的な懸念は残念ながら無視された」と不満を表明した。これに対して、マクロン大統領は拡大停止を決めるのは現実的ではないとの考えを示したという。2月9日にマクロン大統領はバイデン米大統領と電話会談を行い、緊密な連携を確認したという。
現在、緊張緩和にむけ、フランスとロシアに、ドイツとウクライナを交えた4カ国高官による交渉が続けられており、10日にもベルリンで交渉が行われる。ドイツのオラフ・ショルツ首相も15日にモスクワで首脳会談に行い、事態の解決を図る意向を示している。