台湾台北 – 2022年7月12日:日台交流協会の台北事務所の安:shutterstock:shutterstock
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安倍晋三元首相の国葬決定で各政党の反応・炎上まとめ 「ふさわしい」の声の一方、反対や慎重論

岸田文雄首相は2022年7月14日、参院選遊説中に銃撃を受けて死亡した自民党の安倍晋三元首相について、同年秋に「国葬」の形式で葬儀を今秋に執り行うことを記者会見で明らかにした。首相経験者の国葬は1967年の吉田茂元首相以来で極めて異例となる。首相は「憲政史上最長の8年8カ月にわたり卓越したリーダーシップと実行力で首相の重責を担った」などと理由を述べたが、国費による葬儀には反対の声や慎重論もある。

法律はなく首相は「閣議決定で」

会見で岸田首相は、安倍元首相について東日本大震災からの復興や日本経済の再生、外交などの功績を挙げたうえで、「外国首脳を含む国際社会から極めて高い評価を受けており、国の内外から幅広い哀悼、追悼の意が寄せられています」と述べ、国葬にふさわしいとの考えを示した。

15日付産経新聞によると、戦前の日本には「国葬令」という法律があり、首相経験者の国葬がおこなわれていたが、法律は1947年に失効した。このため、現在は首相経験者の葬儀の形式に明確な基準はなく、在任期間や功績などを考慮して、政権が判断してきた。

戦後の国葬の先例は、1967年の吉田茂元首相の葬儀のみで、ノーベル平和賞も受賞した佐藤栄作元首相の葬儀(1975年)は内閣と自民党、国民有志が費用を出し合う「国民葬」という形で行われた。80年に死去した大平正芳元首相以降、首相経験者の葬儀は内閣と自民党の合同葬という形式が取られている。

国葬となれば、費用は国が全額を負担することになるが、過去の内閣・自民党合同葬でも、7,000万円超から約1億円を政府が負担している。このため、多額の国負担が批判を受ける可能性もある。

また、法的根拠について岸田首相は、内閣府設置法に基づき、閣議決定で行えるとの見解を示した。

「国葬にふさわしい功績」の声の一方、「憲法違反」の指摘も

安倍元首相が死亡した直後から、TwitterなどのSNSでは、国葬を求める声と国葬に反対する意見が数多く投稿されている。

反対する投稿では、「安倍元首相の政策への批判を隠すもの」「個人の神格化につながる」といった意見のほか、「法律の根拠がないうえ、国葬は憲法違反」との指摘もある。一方で「多くの功績を残した元首相の死を国葬で悼むのは当然」「世界各国から要人が来日することになり、国葬がふさわしい」という賛成意見も多い。

各政党の「国葬決定」への反応まとめ

各政党の反応もさまざまで、自民党は安倍派の議員を中心に「国葬でやるべきだ」との声が高まっていたが、他の政党は反対意見を表明したほか、慎重な検討を求めている。

産経新聞によると、与党の公明党は、国葬に関するコメントを避け、記者団に対し「党としてコメントしない」と回答した。

明確に反対を表明しているのは、共産党と社民党、れいわ新選組で、共産党は15日、「安倍元首相の政治的立場や政治姿勢に対する評価は、大きく分かれていることは明らかだ」としたうえで、「元首相に対する弔意を、個々の国民に対して、事実上強制することにつながることが強く懸念される」との志位和夫委員長の談話を発表。社民、れいわも反対する声明を出した。

また、立憲民主の泉健太代表は15日、「元総理に対する毀誉褒貶も、政府の悼み方についてもさまざまな情報が巡り、議論が湧き上がる時期。岸田総理が政治的に急ぎ過ぎたことが混乱を招いている。政府は追悼のあり方を熟考すべきだ」とTwitterに投稿。慎重な検討が必要だとの考えを示した。

国民民主の玉木雄一郎代表はTwitterに「国の内外から広く哀悼の意が寄せられており、国葬とすることについては理解できる」と投稿。日本維新の会の松井一郎代表は、記者の取材に「反対ではないが、賛成する人ばかりではない。批判が遺族に向かないことを祈っている」などと述べた。

また19日、自民党茂木敏充幹事長が記者会見で「法律上も全く問題ない。国葬は極めてふさわしい、適切なあり方だ」と述べ、野党から国葬反対の声があることについて「私は認識していない」とし、反対意見を聞いてみないとわからないとしながらも「国民の認識とはかなりずれているのではないか」と見解を述べた。この報道が出ると、SNSでは一時「炎上」ともいえるような反応が見られた。