画像:shutterstock 国会議事堂
画像:shutterstock 国会議事堂

本日施行AV新法 「撮影が中止に」など出演者らの抗議相次ぐなか

アダルトビデオ(AV)への出演強要などの被害の防止や救済のために制定された「AV出演被害防止・救済法」(AV新法)が2022年6月23日に施行されたが、AVの出演者らから「撮影が中止された」などの訴えが相次いでいる。法案作成の中心となった議員のTwitterにも批判が殺到している。

出演者らから反対の声

AV新法では、年齢や性別を問わず出演者は、AV公表後1年間(施行後2年間は2年)、無条件に契約を解除できるとし、業者には商品回収や動画削除などの原状回復義務を課している。また、業者に出演への説明や契約を義務付けるほか、契約から撮影まで1カ月、撮影から発表まで4カ月を空けるよう求め、契約の不実告知などには罰則もある。

新法が制定されるきっかけは、22年4月の改正民法施行だった。成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことで、18歳や19歳を狙ったAVへの出演強要などが増えるのではないかと懸念した人権団体や弁護士らが国会に対策を求めた。その結果、年齢を問わず、AV出演にかかわる被害やトラブルを防止するための法案が議員提案で国会に提案され、6月15日に可決された。

ところが、法案に対しては、AV出演者や製作者を中心に法案の準備段階から反対の声が上がった。可決後には、「撮影が中止になった」「契約にともなう作業が増えて、制作がストップしている」という訴えがTwitterなどで相次いでいる。

AVそのものに対する意見の隔たり大きく

女優の金苗希実さんが19日、「7月決まってたAVの撮影が全部中止…… AV新法で女優が守られるどころか仕事が無くなって現役の女優たちが苦しむ構図って誰得なん」とTwitterで発信。22日には「AV新法をすべて否定しているわけではない」としながら「適正AVメーカーやプロダクションは出演オファー時に本人への意思確認を徹底しています。取り締まるべき部分がズレている、制作者側を悪と決めつけないでほしい」と訴えた。

金苗さんのツイートには多くの意見が寄せられたが、19日の発信には、AV新法成立の中心となった1人、立憲民主党の塩村文夏参院議員が「決まっていた撮影が中止に?なぜ?」と疑問を呈した。

塩村議員のTwitterによると、施行日以前に交わした契約は有効で、7月に予定されていた撮影を中止にすることまではできないという。そのうえで「中止にする理由を確認したほうがいいと思います」とアドバイスした。

しかし、これには「業界の実情を知らない」などと批判が殺到。やはり女優の月島さくらさんがTwitterで「決まっていた撮影、といっても以前は『撮影内容、ギャラ、拘束時間、日にち』までしか決めていません。契約書を書くのは当日です」と業界の慣習を挙げて反論。「あなたは私たちを苦しめているだけです。せめて賃金補償してください」と訴えた。

男女問わず、AV出演の強要被害を防ぎ、被害者を救済するのが目的の新法だが、AV業界には「業界の慣習を無視した規制」との意見が強く、このままでは、適法に制作していた会社が立ちゆかなくなるとの声もある。

法案を推進する立場の人の中には「AVそのものを認めない」という強硬な意見もあり、法律に則って制作を続けたいという業界側の意見との隔たりは大きい。

法律は施行から2年以内に見直し、状況に応じて必要な措置を講じることも定められており、今後も規制のあり方をめぐる議論が続きそうだ。