バイデン米大統領が2022年5月24日、日米首脳会談やクアッド首脳会合など3日間の日程を終え、帰国したが、首脳会談やクアッドでの対中国に関する発言に中国が反発。中国外務省が日本公使に抗議したほか、在日本大使館のホームページでは日米共同声明などに反論する記事を掲載している。日本側は「(中国側の主張は)受け入れられない」と反論したという。
「中国の利益を重大に損なった」と非難
時事通信によると、中国外務省はクアッド首脳会合が終わった24日夜、劉勁松アジア局長が在中国日本大使館の志水史雄特命全権公使と緊急で会談。中国側は、日米首脳会談やクアッド首脳会議について「日本側の誤った言行に厳正な申し入れを行い、強烈な不満と深刻な懸念を表明した」としている。
日本側も外務省のホームページで、志水特命全権公使が、劉勁松局長から日米首脳会談と(クアッドでの)日米豪印首脳会合に関する申入れを受けたと発表。日本の立場に基づき「中国側の申入れは受け入れられない」と反論したうえで、一方的な中国側の行動に対して懸念を表明し、適切な行動を強く求めたと説明した。
また、在日中国大使館も24日、公式ホームページに記者との一問一答の記事を掲載した。
記事では「日米指導者の会談と日米共同声明は悪意をもって中国に関する議題をもてあそび、中国をゆえなく非難し、中国の内政に乱暴に干渉し、国際法と国際関係の基本準則に重大に違反し、中国の主権、安全、発展の利益を重大に損なった」と日米首脳を非難。
また、バイデン大統領が台湾防衛に関与すると発言したことには「台湾は中国の領土の一部であり、台湾問題は中国の主権と領土保全に関わる。中国の核心の利益に関わることに外部勢力のいかなる干渉も容認しない」と従来の主張を繰り返して反論した。
日米主導の「中国包囲網」と反発か
23日の日米首脳会談後の記者会見で岸田文雄首相は「東・南シナ海における力を背景とした現状変更の試みに強く反対すること、人権問題を含めた中国をめぐる諸課題への対応に引き続き日米で緊密に連携していくことなどで一致した」と述べ、日米で協力して中国に対抗していく姿勢を見せた。
また、経済連携の面でも、首相はバイデン大統領が唱える「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を歓迎し、日本も参加することを表明した。米国は、IPEFによって中国に対抗し、アジアでのサプライチェーンの再構築やデジタル貿易のルールづくりを進める狙いがあるとされている。
日米とオーストラリア、インド4カ国の協力枠組みであるクアッドの首脳会合でも、4カ国は中国の台頭を念頭に「あらゆる威圧的、挑発的、一方的な行動に強く反対する」ことを確認。インド太平洋地域のインフラ整備に支援や投資を目指す方針を示した。
巨大経済圏構想「一帯一路」を推し進め、途上国への影響拡大を図る中国の目には、今回の日米首脳会談やクアッド首脳会合が、日米主導での中国包囲網の足がかりと映っているのは間違いないだろう。
これらの緊張が「第二のウクライナ」を招くのでは、という懸念もある。日本外交は難しいバランスが求められている。