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公立で教員不足2000人超え 専門知識持つ社会人の活用を文科省が通知

全国の教育現場で、学級担任などに配置する教員が足りない状態が続いているとして、末松信介文部科学相は2022年4月22日、教員免許を持たない社会人も教壇に立てる「特別免許状」の活用を都道府県教育委員会などに通知したと記者会見で明らかにした。

「特別免許状」の積極的活用求める

文部科学省は21年度に教員不足に関する全国調査を初めて実施。公立の小中学校や高校などで計2558人の教員が不足しているとの結果を公表した。今年度も厳しい教員不足がつづいているとして、全国の教育委員会に緊急の通知を行った。

特別免許状は、普通教員免許とは違い、大学などで教職課程を履修していなくても取得できる教員免許。専門的な知識や技能持つ人を教員として採用するために1988年に設けられた。免許は都道府県から授与され、授与された都道府県内のみで有効となる。

文科省は特別免許状について、博士号を取得した人や国際的なコンクールで実績がある人などを対象とするなど基準や手続きを緩和できるとしたうえで、以前から積極的な制度の活用を促してきた。しかし、一部の都道府県では積極的な活用が図られていないとして、今回、事務連絡を発出した。末松文科相も都道府県などの教育長に直接会って、活用の働きかけをするという。

教育財政や教員の配置に詳しい日本大学の末冨芳教授は21日付のNHKニュースで「現在の状況が続けば子供の学びや成長への影響が懸念される」と指摘。「国や自治体は事態の深刻さを認識し、正規の教員を確保できるよう予算措置していくことが重要だ」と話した。

全国の教師不足は2000人超に

文科省は22年1月31日、「教師不足に関する実態調査」を公表した。対象は全都道府県・指定都市の教育委員会など68団体で、21年度始業日と5月1日時点の公立の小中高校、特別支援学校計3万2903校の教師不足の状況をまとめた。「教師不足」ついて、文科省は「臨時的任用教員などの確保ができず、学校へ配置する教師の数に欠員が生じる状態」としている。

調査結果によると、教師の不足数は始業日時点で、小学校937校で1218人、中学校649校で868人、高等学校169校で217人、特別支援学校142校で255人。全体で1897校、2558人(0.31%)にのぼった。

その後、臨時的任用教員を補充するなどして、5月1日時点では小学校794校で979人、中学校556校で722人、高等学校121校で159人、特別支援学校120校で205人となり、計1591校、2065人(0.25%)にまで改善したが、2000人を超える教師が不足していた。

こうした教員不足によって、小学校では学級担任が足りず、校長や副校長、教頭ら管理職が担任を務める学校もある。中学校でも、教科担任を確保できない学校があるという。