ウクライナ政府は2022年4月24日、ツイッターの公式アカウントでナチス・ドイツの指導者ヒトラーと昭和天皇を同列に扱い、顔写真を並べて掲載していたことを謝罪した。4月1日に投稿された動画だが、23日ごろから日本のネットユーザーの間で拡散し、批判が相次いでいた。
プーチンに対する「ファシズム批判」の動画の中で
動画はロシアのプーチン政権を「現代のファシズム」として批判する内容の1分ほどの短い動画。「ファシズムとナチズムは1945年に敗北した」と、ヒトラーやイタリアのファシズム指導者のムッソリーニを引き合いに出し、ヒトラーを中心に昭和天皇を含めて3人の顔写真を並べた。
動画は4月1日に投稿され、当初はほとんど話題になっていなかったが、23日ごろから国内のネットユーザーの間で取り上げられるようになり、ウクライナ政府に動画の削除や謝罪を求める声が相次いでいた。自民党外交部会長の佐藤正久参院議員も「外務省欧州局等に早急に対応を取るよう申し入れております」とツイートし、2国間の問題となりつつあった。
こうした事態を受け、ウクライナ政府は24日、公式Twitterに「間違いを心からおわびします。日本の友好的な人々を怒らせるつもりはありませんでした」と投稿。昭和天皇の写真を削除した動画を改めて投稿したことを明らかにした。
在日ウクライナ人からも抗議の声
動画に対しては、日本人だけでなく日本在住のウクライナ人からも非難の声が上がった。ウクライナ出身の国際政治学者、グレンコ・アンドリーさんはTwitterで在日ウクライナ大使館に抗議したことを明らかにした。
グレンコさんのツイートによると、アカウントを管理しているのはボランティアグループだとして、政府の公式見解ではないとの説明があった。大使からも本国政府に「日本の天皇は戦争扇動とファシズムに関係ない。日本人はとても怒っている。この同一視は不当で、史実を無視している。訂正を強く求める。日本はウクライナの最大の味方の一人だ」と訂正を求めたという。
磯崎仁彦官房副長官は25日の会見で「ヒトラーとムッソリーニ、昭和天皇を同列に扱うことは全く不適切であり、極めて遺憾」と述べた。写真が不適切であることを指摘し、ただちに削除するようウクライナ大統領府や在日大使館に申し入れた結果、ウクライナ政府側からは外交ルートで謝罪の意が示されたという。
そのうえで、磯崎副長官は「今後とも困難に直面するウクライナの人々に寄り添った支援を実施していく」と述べた。