画像:shutterstock #metoo
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映画界から芸能界全体へ 性暴力の撲滅求める声広がる

週刊文春が2022年3月に報道した映画監督による女優らへの性暴力の問題が、芸能界全体の問題として波及しつつある。報道から1カ月以上がたち、映画監督や女優、映画の原作者となった経験のある作家らが声明や意見を公表。芸能界の構造的な問題への指摘も挙がっている。

「腐った世界を変えていかなくては」と鈴木砂羽さん

女優の鈴木砂羽さんが4月12日、投稿サイト「note」に「無性に書きたくなって」と題し、過去に映画監督に暴言を吐かれた経験を記し、性暴力の問題について考えを述べた。

鈴木さんによると、十数年前、映画の主演の話があり、監督とプロデューサーと会食をしたところ、監督の最新作の映画を褒めなかったため、監督から「あんな作品に出ているお前はクソ」などと過去の出演作品を激しい口調でけなされた。

鈴木さんが反論すると、監督はさらに罵倒を続け、さらには、過去に交際した女優の名前を挙げて、彼女が売れたのは自分の功績などと自慢。最後は「出てけ、お前みたいな女優は二度と顔見せんな」と言われたため、鈴木さんは席を立った。

その後、鈴木さんは「作品を大絶賛したら、自分をマンションに引き連れるつもりだったのか」と強い憤りを覚えたが、事を荒立てないよう、これまで黙っていたという。

そのうえで、今回の報道について触れ、「でもこれからは違う。泣き寝入りしてはいけない。事務所も見て見ないふりはしてはいけない。絶対に役者を守らなくてはならない。長いモノに巻かれてやり過ごす時代は終わった。業界にはびこる腐敗に気づいた我々が、この腐った世界を変えてゆかなくてはならない」などと訴えた。

水原希子さん「暗黙の了解のような空気が存在している」

また、4月13日には「週刊文春オンライン」が、性暴力への対策を求める女優、水原希子さんのコメントを公表した。

水原さんによると、インティマシーシーン(性的なシーン)のある作品で、相手の男性が前貼りを拒否したり、関係のない人が現場に立ち入ったりして、女優が理不尽な思いに駆られることが少なくないという。

これについて、「業界の中で俳優とは脱ぐと決めたら細かい事を気にせず、脱いで演じ切る。そのようなある種の美徳があり、役者魂で乗り切り、体当たりで演じ切る事が立派な俳優だ、みたいな歪んだ捉え方、精神、概念を押し付けてくる暗黙の了解のような空気が存在している」と指摘。今後、こうしたことが起きないように、撮影環境を整えるインティマシーコーディネーターを採用してほしい、と求めた。

作家からは「物語を安心して委ねられる業界を」

4月12日には「原作者として、映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます」として、作家の山内マリコさんや柚木麻子さんが共同で声明を発表し、湊かなえさんや三浦しをんさん、津村記久子さんら18人の作家が賛同者として名を連ねた。

声明では「映画制作の現場での性暴力・性加害が明るみに出たことは、原作者という立場で映画に関わる私たちにとっても無関係ではありません。不均等なパワーバランスによる常態的なハラスメント、身体的な暴力、恫喝などの心理的な暴力等が、業界の体質であるように言われるなかで、今回、女性たちが多大なリスクを背負って性被害を告白したことは、業界の内外を問わず、重く受け止めるべき」だと主張。「物語を安心して委ねられる映画業界を望みます」と対策を求めている。

この声明を受け、女優の橋本愛さんもInstagramで意見を表明。「少なくとも私が、とても救われました」と感謝したうえで、「性被害は、一生、何があっても取り返せないんです。たとえ加害者が逮捕されようと、罰せられようと、どうなろうと。だから一番は、記憶を消すしかないんです」とつづり、被害を訴えることができない被害者の思いを代弁した。

週刊誌などの一連の報道では、映画監督やプロデューサー、男性俳優による性暴力が相次いで告発されている。女優や作家らから次々と改善を求める声が上がる中、芸能界も、今回の問題を一部の監督らの個人的なものとしてとらえるのではなく、業界全体の課題として取り組む姿勢が求められそうだ。