欧州連合(EU)のヨハンソン欧州委員(内務担当)は2022年3月23日の記者会見で、ウクライナから難民を受け入れる際の「負担の公平な分担」について協議を開始すると述べた。ウクライナの隣国は、ポーランドのほかオーストリア、キプロスなど規模の小さな国ばかりで財政負担の重さが課題となっている。
国外への避難民は350万人 財政負担が課題に
24日付のロイター(日本語ウエブ版)の報道によると、EU加盟国の内相理事会で協議が行われる。2015年から16年にかけて、シリア難民が大量にEU域内に流入した際、受け入れ人数を巡って加盟国が激しく対立したため、今回は加盟国に難民の数を割り当てて受け入れを義務づける措置は取らないという。
国連によると、ロシア侵攻後に国外に逃れたウクライナ避難民は約350万人で、大半が東欧の近隣国に流入した。ヨハンソン氏によると、いったん隣国のポーランド、ルーマニア、スロバキア、ハンガリーに入国した人が多く、そのうち200万人ほどが既にEU域内の西の地域に移動した。
また、経済協力開発機構(OECD)の推計によると、EUに300万人の難民が域内に入った場合、当初の年間直接コストが少なくとも域内総生産(GDP)の0.25%相当に達する。人口も財政規模の小さな隣国にとっては、大きな負担で、今後の状況によっては、さらに負担が膨らむ可能性がある。
このため、欧州委員会では加盟国の人口規模、国内のウクライナ難民の数、前年に受け入れた亡命者の数を考慮したうえで、各加盟国の相対的な影響を量る指数の作成に着手した。
欧州最貧国モルドバも36万人以上の避難民を受け入れ
3月23日付の時事通信ウエブ版は、ウクライナの隣国、モルドバの現状を伝えている。モルドバはウクライナとルーマニアに挟まれた小国で、ヨーロッパの最貧国の一つ。EUには加盟していない。
時事通信によると、ロシア侵攻が始まって以来、国の人口の1割を超える36万人以上の避難民が入国した。大半は短期間の滞在でルーマニアやドイツなど他の欧州諸国を目指すが、十数万人が長期間滞在する見通しだという。政府が用意した避難施設だけでは収容しきれず、大学や民間セクターもスペースを提供。避難民を空き部屋に迎え入れている家庭も少なくない。
政府は関係省庁合同の「危機管理センター」を設置。自治体や関連機関を統括して、施設運営や移送など受け入れ全般の指揮にあたっている。難民保護のための予算は1人1日当たり、日本円で3000~3600円になるといい、今後、財政的に負担が重くのしかかることが懸念される。
時事通信は「モルドバは貧しい国だが、できる限りのことをしている。人々は(厳しい状況に置かれた)難民に深い共感を抱いている」と政府関係者の声を伝えている。
モルドバの現状については各国も憂慮しており、3月17日に開かれた先進7カ国(G7)外相によるオンライン会合では、G7を中心に「支援グループ」を立ち上げることで一致した。日本の林芳正外相は日・モルドバ友好議員連盟の会長を務めている。
画像:shutterstock( 2022年3月16日:スロバキア国境のウクライナ避難民の避難所に結び付けられたウクライナ国旗)