在ロシア日本大使館は2022年3月10日、ロシアに入国している日本人に対し、ロシアから日本への出国ルートを公式ホームページで提示した。日本への直行便はなく、中東や北欧を経由しなければならないという。現地では、ロシアからの出国を希望する人が増えているのに加え、経済制裁の影響もあり、チケットの高騰が続いている。
ロシア出国は中東か北欧経由で
在ロシア日本大使館のホームページによると、現在、ロシア国内から日本へ直行する航空便は運行しておらず、カタールやトルコ、アラブ首長国連邦など中東や中央アジアを経由する必要がある。また、サンクトペテルブルクから鉄道やバスで北欧のフィンランドに向かい、フィンランドから航空便で日本に帰国するルートもある。
しかし、各国とも新型コロナウイルス対策で水際対策を取っており、ワクチン接種証明書やPCR検査の陰性証明書などの提示が求められる。特にフィンランドは、「スプートニクV」などロシア製の新型コロナワクチンの有効性を認めておらず、ロシア製ワクチンを接種していても接種完了者とはみなされない。このため、ロシア製ワクチンを接種した人はエストニアを経由してフィンランドに入国する必要がある。
外務省は現在、ウクライナとの国境周辺地域について、危険情報のうち最も高いレベル4(退避勧告)を出し、その他のロシア全土にもレベル3(渡航中止勧告)を発出。ロシアへの渡航は目的を問わずに中止するよう呼び掛け、現在、ロシア国内にいる日本人には商用便による出国を検討するよう呼びかけている。
外務省によると、EUなどがロシア航空機の領空飛行を禁じ、その対抗措置としてロシアが自国の領空飛行を禁じる措置を取ったことから、3月5日にロシアは、国内航空会社に対しロシアと外国との間の旅客輸送の一時的停止を勧告した。その結果、航空券の価格が急騰するなど航空券の入手が困難な状況となっているという。
航空チケットの入手難で「片道で50万円」の声も
ウクライナ情勢の悪化を受け、ロシアから出国しようとする日本人の間からは、チケット入手の難しさや日常生活の悪化を訴える声が上がっている。
NHKは10日のニュースで、ロシアにバレエを学ぶために留学している女性の話を紹介。女性は「(日本とロシアは)これまで12万円ほどで行き来できていたのが、今は、中東を経由するルートになり、片道だけで50万円以上になっていた。日本人留学生の中には、身の安全を考え、高い航空券を買って帰国した人もいる」と話したという。
SNSでも「数日でチケットの値段が高騰していた。11万円だったのが翌日は30万円、数日後には50万円に」「コロコロと変わる飛行機の空席情報。昨日は満席だったのに、今日は販売されてたり。さっきまで30万円だったのに、今は40万円だったり」といった投稿が見られ、現地の混乱ぶりが伝わってくる。